写真:豊町御手洗のまち並み © 呉市 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際)
この記事では、建築基準法上の道路を示す『指定道路図・指定道路調書』について解説を行っています。
こんにちは!やまけん(@yama_architect)といいます。
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目次
指定道路図・指定道路調書とは?
指定道路図とは、建築基準法上の道路の種類や位置などを縮尺2,500分の1以上の地図や都市計画図に掲載(図示)しているもので、建築基準法施行規則第10条の2の規定に基づき、特定行政庁が作成することができる図面です。*義務ではなく”できる”とされています。
通常は、この指定道路図のほか、指定した道路の種類や指定年月日、位置や幅員などを記した指定道路ごとに作成される台帳(指定道路調書)を合わせて作成します。
また、指定道路図及び指定道路調書は、建築基準法第93条の2の規定に基づき誰もが見ることができる状態(閲覧)にしておかなければならないとされていますので、この両資料を作成したら閲覧に供されます。
(書類の閲覧)第93条の2
特定行政庁は、確認その他の建築基準法令の規定による処分並びに第12条第1項及び第3項の規定による報告に関する書類のうち、当該処分若しくは報告に係る建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがないものとして国土交通省令で定めるものについては、国土交通省令で定めるところにより、閲覧の請求があつた場合には、これを閲覧させなければならない。(書類の閲覧等)第11条の4 法第93条の2(法第88条第2項において準用する場合を含む。)の国土交通省令で定める書類は、次の各号に掲げるものとする。ただし、それぞれの書類に記載すべき事項が特定行政庁の使用に係る電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスク等に記録され、必要に応じ特定行政庁において電子計算機その他の機器を用いて明確に紙面に表示されるときは、当該記録をもつてこれらの図書とみなす。
建築基準法第93条の2、建築基準法施行規則第11条の4第1項(抜粋)
一 〜 六 (略)
七 指定道路図
八 指定道路調書
どのようなことに活用されるの?
建築行為や宅地開発行為、不動産の土地取引において多く利用されます
道路は、道路法や都市計画法、土地区画整理法、農地法といった様々な法律に規定されておりますが、道の形をしているからといって、必ずしも建築基準法の道路に該当するわけではありません。この建築基準法上の道路であるかどうかの“確認”が建築(再建築)できるかどうかで非常に大きな意味があります。
業界の方であれば多くの方がご存じかと思いますが、通常、都市計画区域内での建築行為や開発行為においては、建築基準法上の道路に接していないと建築や開発行為を行うことができない規定となっております(開発行為の場合には法上の道路に接続する道路の整備など)。
そのため、特定行政庁により指定された道路(指定道路)であるかどうかは、これらの行為を行うにあたって必須の確認事項となるわけです。
この道路図や調書が整備されていないと、この国の経済の基礎である“建築”という行為に支障をきたすわけですから、行政・民間双方にとって重要な意味があります。
指定道路図が作成される道路の種類
指定道路図は、次の道路において作成されます。
道路の種類 | 概要 |
---|---|
法第42条第1項第四号道路 | 都市計画道路等の2年以内事業執行予定 |
法第42条第1項第五号道路 | 開発行為等以外の小規模宅地等で整備することができる位置指定道路 |
法第42条第2項道路 | 幅員4m未満のみなし道路 |
法第42条第3項道路 | 幅員2.7m以上4m未満のみなし道路 |
法第42条第4項道路 | 幅員4m以上6m未満の第1項みなし道路 |
法第68条の7第1項道路 | 地区計画等の予定道路 |
指定道路図及び指定道路調書において記載される内容
特定行政庁が道路を指定すると、その道路について、建築基準法上の種類や年月日、位置などに関して公に告知(いわゆる公告)する義務が発生します。
公告において記載された内容を、指定道路図及び指定道路調書にも同様に記載する必要があります。
なお、建築基準法上の道路ではない道(接道とみなせない道路)については、法律上の公告義務はありませんが、道路扱いしない道であるかどうかの判断は、建築や不動産取引においてとても重要であるため、多くの特定行政庁では指定道路図にその内容を記述しています(行っていない行政庁もあるため注意が必要)
- 道路の種類(建築基準法第42条の種類)
- 指定の年月日
- 指定道路の位置
- 指定道路の延長及び幅員
- 法第42条第3項道路の場合には、水平距離(幅員2.7m以上4m未満)の位置及び延長等
- 位置指定道路(法第42条第1項第五道路)については、申請者氏名
参考 名古屋市(特定行政庁)の事例
名古屋市では、インターネット上で指定道路図と指定道路調書の公表を行っています。名古屋市の公式ページから指定道路図及び指定道路調書を閲覧できるように整備されています。
補足・まとめ(今後の動向など)
法律上、特定行政庁による指定道路図及び指定道路調書の作成は義務付けられていませんので、作成していない自治体もあるようです。
以前、国土交通省が調査したところによると、平成27年4月1日現在で、約95%の特定行政庁において作成済又は調査・作成中(対象は全450特定行政庁)、更に窓口で公開している特定行政庁は約70%にとどまっています。
つまり、約5%の特定行政庁で指定道路図の作成を全く行っておらず、更に約30%の特定行政庁は、窓口において公開していないということになります。
ちなみに、インターネット上で公開している特定行政庁は、たった98特定行政庁ですので、いかにデジタル化が遅れているかが分かります。
*出典:国土交通省公式ホームページ
>>https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk5_000001.html
とはいえ、現在は調査時点から5年経過以上しているため、状況はもう少し改善されているとは思います。
土地取引を行う不動産業者や建築設計を行う建築士の方は、毎回、調査の度に窓口に赴いて詳細な調査をしなければならないのは、社会全体でみれば結構な時間的損失(つまり経済的損失)なような気がします・・・。
今後DXの推進によって、役所のデジタル化も進むと考えられるので、あと10年もしたら、わざわざ窓口に足を運ばないで、全て窓口で完結するシステムになるんじゃないかなと勝手に期待しています。
ということで以上となります。参考になれば幸いです。