【屋外階段を木造?】八王子市内で発生した屋外階段崩落事故に関する建築法規とは。

令和3年 4 月に八王子市内で発生した共同住宅の屋外階段崩落によって死亡事故が発生したのはみなさんご存知ですよね。実際、建築基準法において何が問題だったのか解説していきたいと思います。

なお、先日、国土交通省から今回の事故があった共同住宅に関わった物件について調査結果が公表され、241件のうち6件が「特定行政庁による現地調査の結果、劣化等により危険性があり、所有者等へ改善指導を実施済」となりました。
>>詳しくはこちら。https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001407112.pdf

では、そもそも屋外階段崩落の事故の原因となった木造屋外階段は可能なのでしょうか。
屋外であれば、風雨に晒されることになるので、風雨に耐えられる木造(イペやウリン)じゃないと長期間は厳しいんじゃないの??と思っている方も業界には多いと思いますので、建築法規の専門サイトであるブログらしく説明していきたいと思います。




答えは建築基準法施行令第121条の2(屋外階段の構造)

屋外階段の構造については、建築基準法施行令第121条の2に規定されています。

(屋外階段の構造)
第121条の二 前2条の規定による直通階段で屋外に設けるものは、木造(準耐火構造のうち有効な防腐措置を講じたものを除く。)としてはならない。

建築基準法施行令第121条の2

これだけ読むと直通階段で屋外に設けるものは、木造としてはならないと読めますが、いくつか注意点があります。初めに直通階段という用語ですが、直通階段とは、避難階以外の階から直接的に避難階又は地上に通ずる階段のものをいいます。避難階とは、直接地上に通ずる出入り口のある階をいます。

次に準耐火構造(耐火構造も含む)とは、防火上必要な措置が施された構造のものをいいますが、木造で準耐火構造とはかなり稀でして、さらに防腐措置を施すことで腐りにくくする必要があります。

なお、準耐火構造(耐火構造も含む)を説明するととんでもない量の記事になってしまうので、詳細説明は省略しますが、簡単にいうと燃えにくい材料を被覆(燃えにくい材料で木をカバー)することです。

この準耐火構造(耐火構造を含む)で防腐措置を施したものであれば木造も可能ということです。もちろん鉄骨造や鉄筋コンクリート造はOK。これ以外の構造方法は木造としてはならないとしています。

事故があった物件は準防火地域で木造3階建ての共同住宅との報道がなされていますから、構造は1時間準耐火構造以上が要求されていると考えるのが普通です。

施行令第121条の2が適用される建築物

最後に、この法令(施行令第121条の2)の対象となる建築物が決められています。そう全ての建築物が対象となるわけではないのです。
施行令では、”前2条”としていますが、詳しくは直通階段の設置2以上の直通階段が適用される建築物となるのですが、簡単にまとめると次のような建築物をいいます。

  1. 法別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物
  2. 階数が3以上である建築物
  3. 採光無窓を有する居室を有する階
  4. 延べ面積が1,000㎡をこえる建築物

不特定多数の人が利用する建築物であったり、3階以上の建築物、採光が取れない居室を有する建築物、規模の大きい建築物が対象となります。

上記以外の建築物(例えば、2階建ての一戸建て住宅など)は直通階段を屋外に設置したとしても、木造とすることが可能です。とはいえですが、今回のような共同住宅は特殊建築物ですので、屋外に設ける直通階段(避難階から直接地上に通ずる階段)は施行令第121条の2が適用されます。

なんで事件が発生したの?

一般的には屋外階段(通路や踊り場を含む)を木造とすることは無いのですが、こちらの物件ではそうだったようです。新聞報道では、建築士は鉄骨造で設計していると述べているので、建築確認申請も問題なかったと考えられます。

じゃあ、完了検査はどうだったかですが、報道によると中間検査も完了検査も済証が出されているようなので、完了検査時に確認申請図面との整合性を検査員がチェックしているはずです・・・

つまり、検査時のチェック忘れだったのでしょうか。憶測が飛び交いそうですが、そのうち、国土交通省から原因等は公表されるはずだと思うので、もう少し待ちましょう。

個人的には、そもそも屋外で鉄骨造を木造で受けること自体がナンセンスだし、逆(木造を鉄骨造で受ける)ならあるかもだけど、材料として脆弱で風雨に晒されるとすぐに劣化する木造を外階段の構造の一部に使うことはまずありえないなぁ・・・

ということで以上です。また続報があればブログに書きたいと思います。
それではまた〜〜〜♪






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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】1級建築士、建築基準適合判定資格者、宅建士など 【実績・現在】元役人:建築・都市計画・公共交通行政などを10年以上経験 / 現在は、まちづくり会社を運営:建築法規・都市計画コンサル,事業所の立地検討,住宅設計など