今回は、上記の疑問を抱えた方の悩みを解決します。
こんにちは!やまけん(@yama_architect)といいます^ ^
YamakenBlogでは、建築や都市計画、不動産に関して業務に役立つ豆知識を発信しています♪
大げさな事を言えば、この記事を読めば、建築基準法に関して知識を有していない方でも、「特殊建築物」についての理解ができるようになるはずです。
目次
はじめに(読み飛ばしてもOK)
「特殊建築物」は建築基準法第2条第二号の定義において記載されています。しかしながら、法第6条第1項第一号で規定する特殊建築物は、全くの別物です。
例えば、法第2条第二号には、福祉系の施設が掲載されていませんが、法第6条第1項第一号に規定する特殊建築物には福祉系の施設が該当することになります。(次項をご覧ください。)
ですので、必ず法第6条第1項第一号を確認する必要があります。仮に「特殊建築物」ではないと理解してしまうことで、例えば建築確認申請を出し忘れてしまったとか(そのような事はほぼないと思いますけど…)
とはいえ、建築基準法を勉強している学生さんや、企業の施設管理を担当している方は、建築基準法に不慣れな部分があると思いますので、あとで行政による撤去命令等の指導を受けないよう特に注意してください。
この記事では、その特殊建築物について解説します。
あまり時間がかからずに理解できるようにしていますので、少々お付き合いください。
特殊建築物とは何?
特殊建築物とは不特定多数の方が利用する建築物のことをいいます。
特定者のみが使用するオフィスや戸建て住宅などの建築物とは異なり、多数かつ様々な人が利用するため、その利用者の安全を担保する観点から、防火・避難に関する技術的なルールが建築基準法において規定されている建築物のことです。
例えば、ホテルや旅館は特殊建築物となります。
ホテルで火災が起きれば大変な事態になりますよね…
その建築物の内部が複雑に入り組り、迷路みたいになっていたら万が一の事が起こった際に避難なんて無理です・・・。そのため、建築基準法では、火災が発生した区画とそれ以外を自動的に区画する防火シャッターや、多くの人が短時間で避難できるよう廊下や扉の幅などの制限が設けれています。
法第2条第二号で規定する「特殊建築物」とは?
建築基準法では「用語の定義」において「特殊建築物」が示されています。
(建築基準法第2条第二号)
学校(専修学校及び各種学校を含む。以下同様とする。)、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、市場、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、旅館、共同住宅、寄宿舎、下宿、工場、倉庫、自動車車庫、危険物の貯蔵場、と畜場、火葬場、汚物処理場その他これらに類する用途に供する建築物をいう。
あくまでも特殊建築物を定義する法文であることに注意してくださいね。
ここに記載されているものだけが建築基準法上において様々な制限を受ける「特殊建築物」ではありません。建築基準法上において防火・避難等に関して制限を受けるのが建築基準法第6条第1項第一号に規定される建築物をいいます。
では、その建築物について解説します。
法第6条第1項第一号で規定する「特殊建築物」とは?
建築基準法上における「特殊建築物」を理解する上で一番重要となるのが建築基準法第6条第1項第一号にか掲げる建築物です。
下記の(い)欄の用途に供する建築物が「特殊建築物」になります。
そして、特殊建築物の用途に供する部分の床面積の合計が200㎡を超えるものは、法第6条第1項第一号建築物となります。
繰り返しですが、ここが重要な部分でして、いわゆる特建といわれる建築物は別表第1に掲げる建築物です。
例えば、床面積が200㎡を超える店舗や飲食店、共同住宅などは、この建築基準法第6条第1項第一号建築物に該当する事になります。
この「特殊建築物」に該当する事になると、建築確認申請時において審査される項目が一戸建て住宅に比べて多く審査期間も35日間(原則として35日以内に確認する)と規定されています。
※この床面積の規定については、2019年6月25日に200㎡に変更となる法令改正がありました。詳しくはブログ内リンクを参照ください!! リンク:法第6条第1項第一号の改正について
法別表第1に規定される建築物の一覧表
(い)
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用途
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(1)
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劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場その他これらに類するもので政令で定めるもの
※政令未制定 |
(2)
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病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る。)、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎その他これらに類するもので政令で定めるもの ※政令:児童福祉施設等(幼保連携型認定こども園を含む。) |
(3)
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学校、体育館その他これらに類するもので政令で定めるもの ※政令:博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツの練習場 |
(4)
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百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場その他これらに類するもので政令で定めるもの ※政令:公衆浴場、待合、料理店、飲食店、物品販売業を営む店舗(10㎡以内を除く) |
(5)
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倉庫その他これに類するもので政令で定めるもの ※政令未制定 |
(6)
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自動車車庫、自動車修理工場その他これらに類するもので政令で定めるもの ※政令:映画スタジオ又はテレビスタジオ |
上記の表は、(い)欄のみ掲載しているため、建築基準法別表第1の全てを知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
特殊建築物に該当しない用途の例
○「事務所」
よくある相談として、事務所ですが、不特定多数の人が利用しても「事務所」は特殊建築物に該当しませんのでご注意ください。床面積が1万㎡であろうとも、事務所の場合には特殊建築物には該当しない。
○「長屋」
長屋は、特殊建築物には該当しません。
おそらくですが、長屋は、共用部分を経由せずに、直接地上階に避難することができるため、共用部分を有する共同住宅とは異なります。
○「工場」
工場は、自動車修理工場を除き特殊建築物には該当しません。
特定の人しか利用しないですからね。当然といえば当然です。ただし、工場内において、工場とは直接関係のない用途(不特定多数が利用する飲食店など)の場合には、その部分は特殊建築物に該当する。
(注)自動車修理工場については自動車というガソリンを扱うことから特殊建築物となります。また、危険物を貯蔵または処理する建築物は耐火建築物等とする必要があります(建築基準法第27条第3項第二号)
補足:倉庫は特殊建築物に該当
よくある誤解して、倉庫(物置)は特殊建築物に該当しないとする考えを持っている方がおります。物置と聞けば小規模なものをイメージしますし、簡易な倉庫も特殊建築物!?と誤解を受けるのは分かるような気がします。
しかしながら、倉庫・物置は、「特殊建築物」に該当します。
なお、倉庫業を営む・営まない関係なく、特殊建築物となります。
>>>関連記事:【倉庫業を営む倉庫とは?】どの用途地域で建築可能か解説します。
特殊建築物が規定されている重要な法令
特に重要と考えられる規定を列挙しています。
▶️建築基準法第12条第1項の規定
定期報告を要する特殊建築物の規定です。
▶️建築基準法第27条の規定
法第27条は耐火建築物等としなければならない建築物の規定です。
▶️建築基準法第35条・第35条の2の規定
法第35条・第35条の3は、特殊建築物の避難及び消火、内装に関する技術的基準です。
本記事のまとめ
今回は、「特殊建築物」の概要について解説しました。
特に重要となるポイントをまとめて解説しましたので、「特殊建築物」となる場合の建築物の制限について理解することができたはずです。
その他、詳しく知りたい場合は、「建築基準法別表第1」について解説を行った記事がありますので、こちらをご覧ください。
それでは、今回は以上となります。皆さまの参考になれば幸いです。建築士のYAMAKEN(やまけん)がお送りしました。
・建築物が特殊建築物に該当すると、どういった制限を受けるの?