岡崎市長による都市計画法違反:原因と対策を分かりやすく解説

先日Yahooニュースで報じられた愛知県岡崎市長による都市計画法違反について、この記事ではその原因と背景を解説します。

さらに、都市計画法違反を防ぐための対策についても詳しく説明していきます。

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都市計画法違反の詳細

ニュースによると、岡崎市長の政治団体事務所が2008年頃から市街化調整区域に事務所を構えたのがはじまりのようです。

2020年の市長選の際に、都市計画違反であることの事実を把握した市(開発指導担当)2021年の5月に市長に事務所を解体するなど違法状態を解消するよう口頭で指導

その際には、市長は「是正に努める」と応じていたがその後進展がなかったようで、2023年2月になって、事務所を撤去する計画案を市(開発指導担当)に示したということらしいです。

また、報道によると政治団体事務所が構えた場所は元々は市長の父親がゴルフ場を経営していたものを引き続いで、廃業した後に選挙事務所を構えたことで都市計画法違反になったしまったそうです。

罪としては、都市計画法第42条第1項違反です。
なお、報道からは、もともとのゴルフ場が開発許可を確実に受けているかどうかが不明なので、仮に開発許可を受けていないとすれば、法第43条第1項にも違反します。

(開発許可を受けた土地における建築等の制限)
第42条 何人も、開発許可を受けた開発区域内においては、第36条第3項の公告があつた後は当該開発許可に係る予定建築物等以外の建築物又は特定工作物を新築し、又は新設してはならず、また、建築物を改築し、又はその用途を変更して当該開発許可に係る予定の建築物以外の建築物としてはならない。ただし、都道府県知事が当該開発区域における利便の増進上若しくは開発区域及びその周辺の地域における環境の保全上支障がないと認めて許可したとき、又は建築物及び第1種特定工作物で建築基準法第88条第2項の政令で指定する工作物に該当するものにあつては、当該開発区域内の土地について用途地域等が定められているときは、この限りでない。

都市計画法第42条第1項

(開発許可を受けた土地以外の土地における建築等の制限)
第43条 何人も、市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域内においては、都道府県知事の許可を受けなければ、第29条第1項第2号若しくは第3号に規定する建築物以外の建築物を新築し、又は第1種特定工作物を新設してはならず、また、建築物を改築し、又はその用途を変更して同項第2号若しくは第三号に規定する建築物以外の建築物としてはならない。

都市計画法第43条第1項(抜粋)

違反の原因と背景

報道によると、記者会見時において岡崎市長は、次のように述べていたようです。

もともと、前の所有者の父親から、「当局から許可をとっているので使っていい」と言われたので、違法という認識がなかった。行政指導を受けた後は、政治団体の事務所として使わないようにしたなどと弁明

また、

「どういう風にしたら合法状態になり、馴染みのある場所で業務を続けていけるかを模索していた」

違反の原因は、都市計画法に関する知識に欠如しており、ゴルフ場の施設として父親から引き継いだものを用途変更して選挙事務所に変更することに関して、都市計画法第42条第1項に抵触することを理解していなかったようです。

確かに都市計画法に関して一定の知識を有していないと、市街化調整区域の意味や市街化調整区域では原則として建築物の建築が禁止されていることなどが分からないため、建築してしまったり建物用途を変更する可能性はあります。

特に、不動産業者から購入したわけではなく父親から相続したのであれば尚更、都市計画法を理解していなかった可能性が高いです。

とはいえ、岡崎市は中核市のため市長引き継ぎの際に都市計画法のうち開発行為のレクチャー(開発審査会を有しているため)を受けているはずですので、少なくとも”市街化を抑制すべく区域”であることくらいは知っているはずです。

非線引きではなく、線引き都市ですから市街化調整区域を理解していなかったは、交通信号のルールが分からなかったと言っているようなものに思います。

また、岡崎市は中核市であり、開発行為自体の許可権者は岡崎市長自身なので、許可権者自らが法律を犯すというのは法治国家としての前提を崩すことにつながり兼ねないです。

市街化調整区域の建築物を原則禁止している理由は以下ような役割があるためです。
・農林漁業の保護や水源涵養機能の維持
・グリーンインフラとして災害から市街地を守る役割
・無秩序な都市化によって生じるインフラの整備・管理コストの増大を抑制
・市街地の適切な人口密度の維持に貢献し都市全体の都市機能を維持
・外部不経済の影響を抑制し、都市の持続可能な発展を支援する役割

罰則と法的影響

罰則としては、都市計画法第92条第6号の規定により50万円以下の罰金に処されます。

第92条 次の各号のいずれかに該当する者は、50万円以下の罰金に処する。
 第42条第1項又は第43条第1項の規定に違反して、建築物の用途を変更した者

都市計画法第92条第6号

また、建築確認申請を行わずに建築物を建築したのであれば建築基準法第6条第1項の手続き違反、加えて、ニュース報道で確認した限りでは、プレハブを単純に設置した可能性が高いので基礎構造などの違反の可能性も高いです。

※建築確認申請では都市計画法に適合しているかどうか審査するため、市街化調整区域に違法に建築した都市計画法違反者は建築基準法にも違反することになります。

とはいえ、いきなり警察のお世話になる訳ではなく、都市計画法違反の場合には、まずはじめに開発行為を所管する部署(開発指導担当)により行政指導が行われます。

行政指導とは、行政手続法による親切な制度です。
口頭や文書による行政指導に従い違反を是正することで行政処分や最悪のケースである刑事告発を逃れられます。

ただし、今回の事案では、はじめに2021年5月に口頭により行政指導し、その後2年近く経過ししたので、行政処分を受けなかったことや刑事告発されなかったのはラッキーだったように思われます。

刑事告発の可能性

本当に都市計画法が分からなくて運よく市の行政指導を受けることができれば良かった方です。

最悪のケースでは、市街化調整区域での違法建築のように明らかに違法である事実を証明することできれば、第三者によって刑事告発される可能性も十分にあるからです。

平成19年以降であれば、役所で建築確認記載台帳や建築計画概要書を閲覧して、確認できなければほぼ間違いなく違法です。また、当時の建築用途と異なる用途で使われている場合には、開発指導担当に確認し新たに開発許可を受けていなければ違法の可能性が高いです。

ましてや影響のある政治家や大企業が違法な行為をしてしまい、今回のようにニュースで報道されれば、受ける影響はとても大きいのですよね。

仮にですが、警察が刑事事件として取り扱い、有罪判決を受けて罰金刑となれば市長であっても前科者となる可能性が高いので、「行政指導を受けてラッキーだった」と言えるのかもしれないです。

今回の事案に限らず、全国的にも市街化調整区域に違法建築した建築物は見受けられますが、行政職員も人手不足によって指導が行き届いていないの実態です。
※人手不足が深刻な地方都市が抱える課題の一つでもあります。

都市計画法違反を防ぐ方法

都市計画法違反を防ぐ手段は既に整ってはいます。

例えば、不動産購入時や賃借時には重要事項説明において必ず市街化調整区域での建築制限について説明を受ける制度になっています。

また、建築時であれば建築士が都市計画法の法規を熟知していますし、法を犯せば建築士免許に対する行政処分が下るので、まず都市計画法・建築基準法違反につながる行為は行わないはずです。

問題となるケースでは、市街化調整区域の土地を相続した場合で、なおかつ自分で建物用途を変更する場合です。

義務教育では都市計画法を勉強する機会がないため、市街化調整区域に役割や法規制について知る機会がないのです。

一部の自治体では、まちづくりの一環として市街化調整区域の規制について説明するリーフレットを作成して回覧したりするケースもありますが、一般的には行われていないため市街化調整区域の制度自体を知らない人が多いように感じます。

このため、土地所有者や土地探し時には都市計画法違反とならないために、購入、売却、賃借、新築、改築、増築、用途変更をする場合には、必ず建築士や宅建士に相談するのが最適です。

抽象的ではありますが、一般的には特に以下の5つが重要かなと思います。

  1. 倫理観と法令順守
    高い倫理観を掲げているか。掲げていれば関連法規や業界の基準を遵守して業務を行う。
    違法行為や不正な手段を使わず正当な方法で顧客のニーズに応えることを目指している。
  2. 透明性
    費用や契約内容について明確で透明性のある説明を行う。
    適切なアドバイスや提案を行い、クライアントに不利益をもたらすような行為を避けている。
  3. コミュニケーション能力
    クライアントの意見や要望に耳を傾け、わかりやすい説明を行うことを心掛けている。
  4. 専門知識と経験
    専門知識が豊富であり、実務経験も十分に積んでいる。
    経験が少なくても役所に何度も相談行くなどリスク回避に努力を惜しまない。
  5. 良好な評判
    口コミや評判をチェックする。

補足情報 ・ 市街化調整区域関連記事

ということで以上となります。

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良かったら読んでみていただければと思います。






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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】1級建築士、建築基準適合判定資格者、宅建士など 【実績・現在】元役人:建築・都市計画・公共交通行政などを10年以上経験 / 現在は、まちづくり会社を運営:建築法規・都市計画コンサル,事業所の立地検討,住宅設計など