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【バリアフリー認定とは?】認定基準・対象やメリットなどを分かりやすく解説

この記事では、バリアフリー新法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)のうち、「バリアフリー認定申請」の簡単な解説です。

解説の前に簡単な自己紹介です。

YamakenBlogは、建築基準法や都市計画法、宅建業法など、まちづくりに関連する難解な法律を、元行政職員がシンプルでわかりやすく解説しています。
*YamaKenの由来は「山登り好き建築士」です。

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バリアフリー認定とは?

バリアフリー認定とは、バリアフリー新法第17条第1項に基づく「特定建築物の建築等及び維持保全の計画の認定」のことをいます。

認定概要をまとめると次のようになります。
*”新”法と呼ぶのは前身の法律であるハートビル法と区別するためです。
*2021年からスタートした観光施設の心のバリアフリーについては最後に触れています。

  • 法律:高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年制定法律)
  • 条項:法第17条第1項
  • 認定者:所管行政庁
    *建築主事を置く市町村等
    (注)民間等の指定確認検査機関には申請することはできません(役所の業務のため)
  • 認定を受けることができる建築物:特定建築物
    *下記参照
  • 建築行為の種別:建築、修繕、模様替
    *修繕及び模様替えは建築物特定施設、出入口、廊下、階段、傾斜路、EV、便所、ホテル又は旅館の客室、敷地内の通路、駐車場など
  • 申請内容:特定建築物の建築等及び維持保全の計画資金計画
    *申請様式:規則第3号(通常正副2部提出)
  • 認定条件:計画建築物=建築物移動等円滑化基準超えかつ建築物移動等円滑化誘導基準に適合
    *円滑化基準は規模の大きい特定建築物が適合しなければならない基準
    *円滑化誘導基準は認定を受けるための基準
  • 審査期間:概ね2週間(許認可に関する自治体の標準処理期間)
    *指摘・修正がある場合にはさらに時間がかかります。
  • メリット:容積率特例
    階段、廊下、傾斜路(スロープ)、便所、駐車場、劇場等の客席が対象。バリアフリー化により床面積が通常よりも大きくなる部分について、容積率算定の基礎となる延べ面積に不算入(1/10を限定)
    *詳細は、平成18年国土交通省告示第1490号に規定
    ※社会資本整備交付金による補助事業がありますが、民間の商業施設には使用できないため現時点の税財政上のメリットは容積率特例のみ。
特定建築物

学校、病院、診療所、劇場、観覧場、映画館、演芸場、集会場、公会堂、展示場、卸売市場、百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗、ホテル、旅館、事務所、共同住宅、寄宿舎、下宿、老人ホーム、保育所、福祉、老人福祉センター、児童厚生施設、身体障害者福祉センター、体育館、水泳場、ボーリング場その他これらに類する運動施設、遊技場、博物館、美術館、図書館、公衆浴場、飲食店、キャバレー、料理店、ナイトクラブ、ダンスホール、理髪店、クリーニング取次店、質屋、貸衣装屋、銀行その他これらに類するサービス業を営む店舗、自動車教習所、学習塾、華道教室、囲碁教室、工場、車両の停車場、船舶若しくは航空機の発着場を構成する建築物で旅客の乗降又は待合いの用に供するもの、自動車の停留又は駐車のための施設、公衆便所、公共用歩廊

バリアフリー化(建築物移動等円滑化基準→義務基準)が必要な2000平方メートル以上の特定建築物のみに限らず、特定建築物であれば認定申請することが可能です。

例えば、小規模な診療所や事務所、共同住宅、さらには工場などの利用者数が限定される建築であっても認定を受けることができます。

認定にあたっては、義務基準よりもさらにゆとりあるバリアフリー化を図る建築物移動等円滑化誘導基準(省令にて規定)に適合させる必要があるのが特徴的です。

例えば、廊下幅は円滑化基準は120㎝以上とされていますが、誘導基準は180㎝以上となります。

このため、廊下や階段等が円滑化基準の建築物よりも大きくなり容積率が増大することから容積率特例(1/10)を受けることができる仕組みです。

※容積率特例の概要

認定を受けるメリットは、容積率特例です。以前は、日本政策投資銀行による低利子融資や割増償却(10%、5年間)の適用などがあったようですが現時点で調べてみると優遇措置に関する具体的な措置は見当たらなかったので休止・廃止されたのではと考えられます。

なお、従前から引き続き、社会資本整備交付金事業(1/3補助)により市町村や都道府県と協力して公益施設(商業施設を除く)の整備にあたっての必要な通路やEV、スロープに対する補助事業は存在します。

活用にあっては市町村の予算措置が伴うことやバリアフリー基本構想の区域内であることなど、様々な諸条件があるため市町村との協議が必要です(また、社会資本整備交付金事業のため必ずしも満額交付されるわけではありません)。

バリアフリー新法の特別特定建築物に関する補足記事はこちら

バリアフリー認定の表示

バリアフリー認定を受けた施設が表示することができるマーク

バリアフリーの認定を受けている建築物については、上記のシンボルマークを表示することができます。

上記のマークを設置している施設はバリアフリーに力を入れている企業さんです。
*企業方針としてバリアフリーに取り組んでいる場合には認定を受けていることが多いです。

正直なところ、バリアフリー認定マークは健常者に対して広く周知されているとは言いにくいです。

自治体も一部の高齢福祉を担当する部署が積極的に推進していますが、経験則としてバリアフリー認定があること自体知らないのが現実かと思います。

とはいえですが、企業として多様性を掲げている企業であれば、建築する施設はなるべく認定を受けるようにするのが望ましいかなと思います。

そうしたバリアフリーに対応した施設であることを積極的に世間的に公表していけば地道で時間はかかりますが良い企業イメージが浸透していくのではと考えられる所です。

まとめ

今回は「バリアフリー認定申請」に関して簡単に解説を行いました。まとめると次のようになります。

法令・項目概要
根拠法バリアフリー新法第17条第1項
*正式名称:高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律
認定者所管行政庁
*建築主事を置く市町村等
対象建築物特定建築物
*詳細は前項を参照
対象行為建築、修繕、模様替
*詳細は前項を参照
認定基準建築物移動等円滑化誘導基準(☜ここが最も重要)
資金計画(☜あまり重要ではありません)
申請内容特定建築物の位置
特定建築物の延べ面積、構造方法及び用途並びに敷地面積
計画に係る建築物特定施設の構造及び配置並びに維持保全に関する事項
特定建築物の建築等の事業に関する資金計画
その他主務省令で定める事項
メリット・容積率特例(1/10限度)*法第19条
・認定マークの表示*法第20条
・社会資本整備総合交付金の活用
その他・手数料無料(自治体によっては有料もあるかも)
・標準処理期間:概ね2週間
・提出部数:2部
※自治体によっては専用ページを設けているのでチェックしてみてください。

バリアフリー認定申請の他に、都道府県が独自に定めている「人やさ」・「福まち」条例に基づく適合建築物へのマーク交付を行っています(用途規模は限定)。バリアフリー認定を受けるのであれば合わせて都道府県条例に基づく基準にも適合させるのも選択肢となります。

最後に補足として行政職員時代に何度か認定申請を受けて認可の審査を行った経験がありますが、小規模な建築物よりも特別特定建築物などの規模の大きい商業施設(スーパー)が多かった印象です。一方で、都道府県の独自条例にすら適合させるのが嫌で役所に文句を言う医者や店舗経営の方々を見てきたのでバリアフリー認定を受ける企業さんは尊敬されるべきだと感じてました(笑)

それでは以上となります。また〜

補足:観光施設の心のバリアフリー認定とは?

2021年からスタートした観光庁所管の認定制度です。バリアフリー認定を受ける施設でかつ観光施設である場合には、この「心のバリアフリー認定」を受けることも考えてみても良いかもです。

対象施設は宿泊施設、飲食店、観光案内所、博物館などの観光施設に限定しています。

認定条件は、
❶施設のバリアフリー性能を補完するための措置を3つ以上行っていること(聴覚障害者向けにテレビの字幕を表示できるリモコンやシャワーチェアなど)。
❷バリアフリーに関する教育訓線を年に1回以上実施
❸自社のウェブサイト以外のウェブサイト(予約サイトなど)で、施設のバリアに関する情報などのバリアフリー情報を積極的に発信 となります。

認定者は観光庁となり、認定は無料、認定マークが交付されます。

令和5年7月現在で900施設以上が認定を受けているそうで、直接的な税制優遇措置はないようです。

優遇措置がないのに900施設以上が認定を受けているのはおかしいと思って調べてみると、認定を受けていると観光庁の補助事業の採択において有利に働くといった記事を書かれていた方がいましたので、おそらく観光庁の補助事業を使われている事業者が認定を受けているものと考えられます。

詳細はこちら(観光庁)






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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】一級建築士、一級建築基準適合判定資格者(建築主事)、宅建士など 【実績・現在】元国と地方自治の役人:建築行政・都市計画行政・公共交通行政・まちづくりなどを10年以上経験 / 現在は、地元でまちづくり会社を運営し、都市に関わるコンサルタントや住宅設計、執筆活動を行っています。