この記事では、「市街化区域内の1,000㎡以上(三大都市圏の一部では500㎡以上など)ある宅地で再建築する場合に新たに開発許可は必要?」という質問にお答えしています。
こんにちはYamakenBlogです。
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再建築の場合には新たな開発許可は不要
理由としては、既存宅地における再建築については開発行為に該当しないためです。
開発行為とは、都市計画法第4条第12項において「主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行なう土地の区画形質の変更」と定義付けしています。
ポイントは、
❶建築物の建築又は特定工作物の建設目的
❷土地の区画形質の変更
市街化区域内であれば1,000㎡以上(三大都市圏は500㎡以上、条例化で300以上まで引き下げ可能)の土地で「土地の区画形質」の変更に該当する工事の場合には、工事着手前に都市計画法第29条に基づく許可が必要となります。
すでに建築物の敷地として利用されている既存宅地においては、この「土地の区画形質の変更」に該当するか否かが、許可が必要か不要かの判断のポイントになります。
「土地の区画形質の変更」は、次の3つに細分化し判断されます。
次の「区画、形状、性質」のいずれかに該当すれば「開発行為」に該当します。
もとから建物が建てられていた宅地(既存宅地)で、かつ、再建築の際に盛土や切土等の造成が発生しない計画であれば「土地の区画形質の変更」には該当しないです。このため、敷地面積が1,000㎡以上であっても開発行為には該当しないとなります。
ただし注意が点があります。
注意点としては、再建築する際の切土・盛土(擁壁等の築造)が発生する場合や土地の区画割を変更したり、新たに隣地を加える場合などは開発行為に該当することとなります(詳細は次項にて解説)。
【補足】
2023年5月26日に施行された盛土規制法(旧宅地造成等規制法)に基づく宅地造成等工事規制区域に該当する土地では、1m超の盛土などを行う場合には同法による許可が必要となりますので注意が必要です。
>>>盛土規制法についての解説:国交省ホームページ
開発行為における宅地とは?
開発行為における「宅地」とは何を指すのか、都市計画法において「定義」が定められていないことを知っておく必要があります。
このため、宅地の定義については、国の運用指針を参酌するかたちで自治体が定めています。
こちらは、東京都及び横浜市の例です。
- 現に建築物の敷地として利用されている土地
(注)その主たる利用目的が建築物の用に供しない土地並びに仮設建築物及び違反建築物の敷地として利用されている土地を除く - 開発行為により造成された土地
- 市街街化区域内で、 土地登記事項証明書の地目が「宅地」であるか否かを判断する日(基準日)の5年以上前から継続して宅地である土地
- 固定資産税課税台帳における地目が、基準日の5年以上前から継続して宅地である土地
- 建築物の敷地として利用されていた土地で、当該建築物の除却の日から基準日までの間、土地の状態に変化のない土地
(注)当該建築物が除却された日から、5年以上経過した土地を除く。
開発行為に係る指導指針を定めている自治体(都道府県、指定都市、中核市)ごとに若干の偏り(5年以上前から宅地であったかどうかなど)があります。
基本的には、現時点で建築物の敷地として利用されている土地(違反建築物の土地を除く)、過去に開発行為により造成された宅地(開発許可に係る完了公告済)、登記上で宅地であれば都市計画法における「宅地」となります。
以上から再建築する計画の場合には、現時点で建築物が建築され従前から「宅地」となるため、性質の変更には該当しないことになります。
(注)既存宅地であっても区画並びに形状の変更に該当する場合には開発行為に該当します。
(注)市街化調整区域の場合には立地基準が適用されるため既存宅地での再建築であっても新たに開発許可が必要な場合があります。
盛土規制法では次のように「宅地」が定義されています。
農地、採草放牧地及び森林並びに道路、公園、河川その他政令で定める公共の用に供する施設の用に供されている土地以外の土地
関連記事
>>>【宅地とは?】宅地建物取引業法と宅地造成等規制法での「宅地」の定義について解説
補足❶:切土・盛土は開発行為に該当
既存宅地であっても、例えば擁壁を築造する場合や宅地の境界を変更する場合には開発行為が必要となります。最近の社会情勢を背景とした例としては、洪水浸水対策として擁壁築造+盛土を行うことで新たに開発行為に該当します。
なお、盛土・切土の高さの基準値については自治体によって判断が異なります。盛土・切土の高さとしては、概ね0.3m〜1.0m以上の盛土や切土が生じる場合には開発行為に該当します。
敷地❷:敷地拡張は何年で開発許可不要?
「区画の変更」に関する補足です。
よくあるケースが過去に開発行為を行った土地や開発行為に該当させない(できない)ミニ開発(道路位置指定など)を行った土地で、数年後に隣地を宅地化する場合(開発行為で整備した道路や道路位置指定道路に接続する開発)です。
この場合、既存宅地であっても一体性・計画性がある場合には原則として一体開発として新たに開発許可を受ける必要があります。
しかしながら、自治体によって異なりますが、数年経過した宅地の拡張については計画性がないとして、一体開発とはみなさない取り決めを行っています。概ね2〜5年を定めています。
*自治体毎で公表している開発行為の手引きや運用指針等に明記されています。
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まとめ
最後にまとめです。
冒頭のタイトル「市街化区域の1,000(500)㎡以上の宅地で再建築する場合には開発許可が必要!?」に対する答えは次のようになります。
市街化区域の既存宅地で再建築する場合、敷地面積が1,000㎡以上(三大都市圏では500㎡以上、条例で300㎡以上まで引き下げ可)であっても、開発行為に該当しない(=土地の区画、形状、性質の変更に該当しない)場合には、新たな開発許可(都市計画法第29条)は不要となります。
留意点として、従前の建築の際の敷地(建築確認申請上の敷地)を拡張して隣地を含める場合(区域の変更)や、新たに擁壁設置するなどの盛土・切土を行う場合(形状の変更)には開発行為に該当するため既存宅地でも改めて開発許可を受ける必要があります。
ということで以上となります。こちらの業務の記事が参考となりましたら幸いです。
参考書籍
参考書籍:盛土規制法に対応した開発行為に係る宅地造成(擁壁等の技術基準解説書)
*開発行為に係る設計担当者は必須です。自治体担当者もこの書籍を使用しています。
関連記事:都市計画法第29条に関する全体解説
市街化区域内のすでに建築物の土地として利用されている宅地(1,000・500㎡以上)において、再建築する場合には新たに開発許可を得る必要はない。