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【都市計画と開発行為】都市計画法第29条をわかりやすく解説

この記事では、開発行為の必要な規模が規定されている都市計画法第29条をできる限り分かりやすく解説しています。宅建士や建築士の勉強をされている方や、これから都市計画に携わろうとしている方向けの記事となっています。

どうも〜。YamakenBlogです。

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建築基準法や都市計画法といった都市づくりに欠かせない法律は、複雑かつ難解なので理解するのに苦しみますよね(私自身が苦しみました。)。そのような方のために、法律を上手に活用してビジネスや生活に活用してもらいたいと思いつくったブログです。

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都市計画法第29条の構成

都市計画法第29条の構成(第3項規定を除く)

都市計画法第29条は、第1項において都市計画区域内及び準都市計画区域内において開発行為を行う者は、あらかじめ都道府県知事の許可を受けなければならないと書かれています。

都道府県知事、政令指定都市長、中核市長、知事事務委任市長

大原則として都市計画区域内(準都市計画区域内)の開発行為は許可が必要としています。

ただし、ここからが重要なポイントです。
ただし書きにおいて、開発行為の許可が不要な規模や行為に関して規定されています。この”ただし書き”に基づく各号(1〜11号まで規定)が宅建士試験や建築士試験などで出題されます。

続いて、第2項は、都市計画区域外及び準都市計画区域外における開発行為の必要な規模について規定されています。また、この項も同様にただし書きとして、開発行為の許可が不要な行為等が規定されています。

最後、第3項は、開発行為の区域が市街化区域や都市計画区域等をまたがる場合の対応方法が明記されています。

よく、市街化区域内は1,000㎡以上は開発許可が必要というのは、第1項のただし書きにおける各号のうち、第1号に規定されているため、詳細は施行令(=政令)に書かれていますから法律を読んでも単純に、開発行為は許可が必要としか読むことができないようになっています。

そして、このことが開発行為の必要な規模の”以上””未満”のどちらかなのかという点で混乱する原因となっています。

都市計画法第29条は開発行為を行うものは基本的に許可必要。ただし、例外的に一部の開発行為については許可不要としますよ〜とする開発行為の規制対象外を規定していると覚えると良いと思います。

>>>都市計画区域とは?準都市計画区域とは?市街化区域とは?

第1項ただし書き各号

第1項ただし書きは、第1号から第11号となっています。よく、基本的な問題として宅建士試験などで出題される開発行為の規模(市街化区域で1,000㎡以上など)は第1号に規定されています。

第1号:市街化区域、非線引き都市計画区域、準都市計画区域

法律では市街化区域内、非線引き都市計画区域内、準都市計画区域内で政令で定める規模未満は開発許可が不要とされています。

つまり、政令で定める規模以上は開発許可が必要となります。この法と施行令では未満が使われているので注意が必要となります。

開発許可が必要な規模
  • 市街化区域 → 1,000㎡以上(条例で300㎡以上まで引き下げ可能)
    三大都市圏のうち以下の区域は500㎡以上
     ・首都圏:既成市街地、近郊整備地帯
     ・近畿圏:既成都市区域、近郊整備区域
     ・中部圏:都市整備区域
  • 非線引き都市計画区域・準都市計画区域 → 3,000㎡以上(条例で300㎡以上まで引き下げが可能)

市街化区域内においては、1,000㎡以上の開発行為は開発許可が必要となりますが、1,000㎡未満であれば開発許可は不要となります。

なお、三大都市圏のうち既成市街地のように都市化が著しい地域では小規模な宅地開発による劣悪な宅地が供給されるのを防ぐために500㎡以上とされています。

また、非線引き都市計画区域といって市街化区域と市街化調整区域の区分を定めていない都市計画区域、さらに準都市計画区域の場合には、市街化区域ほどの宅地化の需要が低いため開発許可が必要な規模は3,000㎡以上とされています。

>>>非線引き都市計画区域とは?

第2号:農林漁業の建築物は許可不要

第2号は法律において次のように規定されています。

つまり、市街化調整区域、非線引き都市計画区域、準都市計画区域内においては、農林漁業の建築物(詳細は政令で指定)の建築、農林漁業を営む者の居住の用に供する建築物の建築目的で行う開発行為は許可不要となります。

市街化調整区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域内において行う開発行為で、農業、林業若しくは漁業の用に供する政令で定める建築物又はこれらの業務を営む者の居住の用に供する建築物の建築の用に供する目的で行うもの

都市計画法第29条第1項第2号

この第2号、市街化区域については規定されていないですよね。

ですので、例えば、市街化区域内で1,000㎡以上の農林漁業のための建築物を建築する目的で行う開発行為は許可不要とはならず、開発許可が必要となります。(市街化区域ですので宅地としての技術水準を確保するために必要)

第3号:公益上必要な建築物は許可不要

駅舎などの鉄道施設、図書館や公民館といった公益上必要な建築物の建築目的として行う開発行為は許可が不要となります。これは、それぞれの個別の法に基づいて施工されたり社会生活上必要な施設であるなどの理由から許可が必要となります。

駅舎その他の鉄道の施設、図書館、公民館、変電所その他これらに類する公益上必要な建築物のうち開発区域及びその周辺の地域における適正かつ合理的な土地利用及び環境の保全を図る上で支障がないものとして政令で定める建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為

都市計画法第29条第1項第3号

公益上必要な建築物は政令で定められていて数が多いのでこちらの記事にまとめています。

>>>公益上必要な建築物

第4〜9号:都市計画事業等

都市計画事業や市街地再開発事業などの別途、都市計画として技術基準が適用される開発行為については、開発許可は不要となります。

都市計画事業とは道路や公園、下水道といった施設を整備する場合に都道府県知事の認可を受けて行う行為となります。土地区画整備事業や市街地再開発事業も同様に事業認可を受けて行う宅地開発行為です。

開発許可が不要となる都市計画事業等
  • 都市計画事業
  • 土地区画整理事業
  • 市街地再開発事業
  • 住宅街区整備事業
  • 防災街区整備事業
  • 公有水面埋立法に基づく埋面許可を受けた土地で竣工告示がないもの

>>>都市計画事業とは?

第10号:非常災害のための応急的な開発行為

災害時に応急仮設住宅を建築するための開発行為など、非常災害のため必要な応急措置として行う開発行為については許可不要となります。

なお、一時的な仮設建築物でもある災害関連の建築は第11号の仮設建築物にも該当するので併せて第11号もご確認ください。

第11号:軽易な行為

最後の第11号は、軽易な行為として仮設建築物の建築や土木事業のための特定工作物の建設などが規定されています。

通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの

都市計画法第29条第1項第11号
開発行為に該当しない軽易な行為
  • 仮設建築物の建築
  • 土木事業その他の事業に一時的に使用するための第一種特定工作物の建設
  • 車庫、物置その他これらに類する附属建築物の建築
  • 建築物の増築・特定工作物の増設で当該増築に係る床面積の合計又は当該増設に係る築造面積が10㎡以内
  • 第1項第2号・第3号に規定する建築物以外の建築物の改築で用途の変更を伴わないもの又は特定工作物の改築。このほか、建築物の改築で当該改築に係る床面積の合計が10㎡以内であるものの用に供する目的で行う開発行為
  • 主として当該開発区域の周辺の市街化調整区域内に居住している者の日常生活のため必要な物品の販売、加工、修理等の業務を営む店舗、事業場その他これらの業務の用に供する建築物で、その延べ面積(同一敷地内に2以上の建築物を新築する場合においては、その延べ面積の合計)が50㎡以内のもの(これらの業務の用に供する部分の延べ面積が全体の延べ面積の50%以上のものに限る。)の新築の用に供する目的で当該開発区域の周辺の市街化調整区域内に居住している者が自ら当該業務を営むために行う開発行為で、その規模が100㎡以内であるもの

第2項:都市計画区域外で開発行為が必要な規模

原則:1ha(10,000㎡)以上の開発行為は開発許可が必要

都市計画法では、次のように規定されています。

要約すると、都市計画区域外・準都市計画区域外では一定の規模以上(政令で指定)の開発行為を行う者は予め開発許可を受けなさないとするものです。なお、ただし書きによって、農林漁業の建築物や公益上必要な建築物のための開発行為は許可不要となります(ただし書きは都市計画法第29条第1項第2号に同じ)。

都市計画区域及び準都市計画区域外の区域内において、それにより一定の市街地を形成すると見込まれる規模として政令で定める規模以上の開発行為をしようとする者は、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる開発行為については、この限りでない。

 農業、林業若しくは漁業の用に供する政令で定める建築物又はこれらの業務を営む者の居住の用に供する建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為
 前項第3号、第4号及び第9号から第11号までに掲げる開発行為

都市計画法第29条第2項

政令で定める規模は、1ha(10,000㎡)以上となります。

また、ただし書きにおいて開発許可が不要な行為を含めると都市計画区域外・準都市計画区域外で開発許可が不要な行為は次のようになります。

都市計画区域外・準都市計画区域外で開発許可が不要な行為
  • 開発行為の規模が1ha(10,000㎡)未満
  • 農林漁業の用に供する建築物の建築目的で行う開発行為
    *第1項の開発行為の不要な行為に同じ
  • 農林漁業を営む者の居住の用に供する建築物の建築目的で行う開発行為
  • 公益上必要な建築物、都市計画事業、非常災害のため必要な応急措置として行う開発行為など*第1項の開発行為の不要な行為に同じ

第3項:開発区域が市街化区域等の内外にまたがる場合

開発行為が様々な区域の内外にまたがる場合はちょっと複雑で、詳細は施行令第22条の3に規定されていますが、基本的に開発許可は必要で、政令で定める規模以上の場合には許可が必要と覚えておけばそこまで気にする必要はないと思います。

もちろん、またがるケースはゼロではないですが、市街化区域と非線引き白地にまたがるケースや市街化区域と都市計画区域外がまたがる事例というのはほぼ考えられないので説明は省略します。

なお、一点だけ注意があります。

それは、開発区域に市街化調整区域が含まれる場合です。

市街化調整区域が一部でも含まれる場合には立地基準が適用されるため、市街化区域で1,000㎡未満や都市計画区域外で1ha未満であっても市街化調整区域が0㎡を超えて開発区域に含まれる場合には開発許可は必要となります。

補足:そもそもなぜ開発行為制度があるの?

開発行為の制度が登場したのは昭和43年(法の施行は昭和44年→1969年)と、今から50年以上前となります。

当時の社会情勢として、人口世帯の急激な増加(団塊世代の子どもが多く生まれた時代)によって、都市のコントロールが上手にいかなくなっていたことが挙げられます。

本来、宅地開発としては望ましくない田畑や山林が宅地化されたり、宅地化されても狭隘な道路(4m程度。現在の技術基準では原則6m以上)が整備されたりと宅地水準が劣悪な状況で、都市が郊外に郊外に拡大していった時代でもあります。

ちなみに、昭和30年代から昭和後期まで続いた都市の拡大によって道路や下水道、公園などの社会インフラの維持が困難となっているのが現代の地方都市の惨状です。IFの話ですが、もう少し手を討つのが早かったら現在の非効率な行政運営も少しは解消できたかも・・・。

劣悪な宅地開発を行っても行政が後追いで下水道や道路整備、電気・通信等の整備を行ってくれるために、宅地としては適していない土地が大量に供給されています。特に山林を開発して大規模盛土が施行された地域では、地震等による被害が顕著なために現代になって宅地の安全対策が行われるようになっています。

>>>大規模盛土造成地に関する参考記事

一見して団地なのに4mの道路により整備され、かつ古い擁壁のところは要注意です。

このため、宅地の一定の技術水準(道路や下水道、公園など)を確保するために登場したのが開発行為制度です。加えて、昭和43年の開発行為制度では、市街化調整区域についてのみ適用される立地基準(都市計画法第34条)がルール化されています。

補足:29条と34条の違い

都市計画法第34条は立地基準といわれるもので、市街化調整区域内にのみ適用され、同法の各号(第1号から第14号)に該当する行為でなければ都道府県知事は許可してはならないとされています。

この第34条である建築物の立地のルールは、市街化調整区域及び居住調整地域(都市再生特別措置法に基づく立地適正化計画を作成している自治体のうち一部の地域で指定:例:むつ市)内において、例外的に認められる開発行為が示されています。都市計画法第29条第1項各号の例外的に許可が不要となるような農林漁業の建築等以外のもので許可しても良いものがが示されています。

都市計画法第29条はあくまでも規制対象外の開発行為に関して規定されていると覚えるのがいいと思います。その上で、具体的な開発許可の基準は第33条(技術的な基準)、第34条(立地基準:調整区域内のみ)に規定、加えて、建築等の制限は第43条に規定されているといった流れです。

ちょっと複雑なのですが、市街化調整区域内のみについては、市街化区域内の開発行為と異なり開発面積に関係なく、建築物を建築(立地)してよいかどうかの判断が行政により行われるということ。

>>>市街化調整区域に関する関連記事

補足:そもそも開発行為とは?

そもそも開発行為については、試験勉強では、建築物の建築や特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更をいうと覚えると思います。

「なるほど、切土や盛土のことか〜」と思ってしまうのですが、実際は、切土や盛土のことのみだけでなく、例えばですが、切土・盛土関係なく農地を宅地とする場合にも開発行為に該当しますし、市街化調整区域内では立地基準が適用されるため原則として許可が必要となります。

ただし、注意点として、例えば、建築物の建築が予定されていない単なる駐車場の整備などは開発行為には該当しなくなります。あくまでも建築や工作物の建設が伴うことが原則です。
*市街化調整区域の場合には農用地区や保安林などの別法に基づき制限されています。

開発行為とは?に関してはこちらの記事にも書いているので参考にしてもらえると嬉しい限りです。

>>>開発行為とは?土地の区画形質の変更とは?

>>>開発行為の設計図書作成には設計者資格が必要!

開発行為に関する補足記事一覧

まとめ・規制対象規模の概要(立地基準と技術基準)

市街化区域、市街化調整区域、非線引き都市計画区域、都市計画区域外および準都市計画区域外の開発行為のルールを表にまとめると次のようになります。

開発行為が必要な規模

さらに詳しく


都市計画法第29条をはじめとする開発行為は難解かつ複雑なルールとなっているので覚えるのに一苦労すると思います。

そうした人の悩みを解決するために宅建士試験向けではありますが、簡単なテキストと問題集をつくってみました。この記事を読んでさらに勉強したい!という方はぜひご覧いただければ幸いです。






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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】1級建築士、建築基準適合判定資格者、宅建士など 【実績・現在】元役人:建築・都市計画・公共交通行政などを10年以上経験 / 現在は、まちづくり会社を運営:建築法規・都市計画コンサル,事業所の立地検討,住宅設計など