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【市街化区域とは何か?】市街化区域に関する疑問を解決

この記事では、不動産を購入・売却したり賃貸する場合などに重要なキーワードとなる都市計画法の”市街化区域”について、その役割や設定方法、建築物の制限などについて説明します

こんにちは!やまけん(@yama_architect)といいます。
普段、建築や都市計画に関する業務経験を活かして建築士や宅建士の業務に役立つ情報を発信しています。

この記事を読むことで、不動産の取引時の用語として頻出する”市街化区域”とは何かが分かるようになります。また、まちづくりを勉強されている方の参考にもなるかと思います。

ということで早速説明しています。




市街化区域とは?


※作成:Yamaken

はじめに結論から説明します。市街化区域とは次の2つの区域をいいます。

  • すでに市街地を形成している区域
  • おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域

 

上記2つの区域の考え方については、後ほど詳細を説明しますが、市街化区域は、都市での生産活動に必要不可欠な道路、公園、水道、下水道、ごみ焼却場、火葬場などの都市施設が整備され、かつ、用途地域といって、建築物の種類ごとに建築可能な用途(住宅や店舗、工場など)・規模が決めれています。

この都市施設の整備と用途地域の制限など(その他、街区単位のきめ細やかな整備等)を行うのが市街化区域であり、一方で市街化調整区域とは、自然環境や農林漁業の保護などの観点から、原則として公益上必要な建築物や農林漁業のための建築物など以外は建築することはできません。

こうした市街化区域と市街化調整区域を分けることを区域区分(線引き)といいます。

効率的な公共投資を行うことが目的ですので、むやみやたりに市街化区域を増やすことは人口密度の低下を招き非効率な公共投資を行わざるを得ない状況を作り出す原因となります。

区域区分については都市計画区域マスタープラン(都道府県作成)によって決められているんですが、ちょっと専門的過ぎるので、少しだけ深く知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

【都市計画法第7条(区域区分)】
都市計画区域について無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときは、都市計画に、市街化区域と市街化調整区域との区分(以下「区域区分」という。)を定めることができる。ただし、次に掲げる都市計画区域については、区域区分を定めるものとする。
一 次に掲げる土地の区域の全部又は一部を含む都市計画区域
 イ 首都圏整備法第2条第3項に規定する既成市街地又は同条第四項に規定する近郊整備地帯
 ロ 近畿圏整備法第2条第3項に規定する既成都市区域又は同条第四項に規定する近郊整備区域
 ハ 中部圏開発整備法第2条第3項に規定する都市整備区域
 二 前号に掲げるもののほか、大都市に係る都市計画区域として政令で定めるもの

2 市街化区域は、すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とする。
3 市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とする。

では、ここからさらに掘り下げたところまで知りたい方はお読みください。

市街化区域には用途地域が定められる

先ほども説明しましたが、市街化区域には用途地域が定められます。

用途地域は全部13種類があり、それぞれの用途ごとに建築することができる用途や規模などが決められており、都市計画法において指定し、建築基準法において実効性この用途地域を指定することで、都市全体を見渡し土地利用をコントロールします。

用途地域名 都市計画法の趣旨 ブログ内解説記事
住居系 第一種低層住居専用地域 低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するための地域 第一種低層住居専用地域に建築制限について(用途制限のまとめ)
第二種低層住居専用地域 主として低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するための地域 第二種低層住居専用地域内の用途制限(何が建築できるのか)
第一種中高層住居専用地域 中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するための地域 第一種中高層住居専用地域内の用途制限(何が建築できるのか)
第二種中高層住居専用地域 主として中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するための地域 第二種中高層住居専用地域内の用途制限(何が建築できるのか)
第一種住居地域 住居の環境を保護するための地域 第一種住居地域の用途制限(何が建築できるのか)
第二種住居地域 主として住居の環境を保護するための地域 第二種住居地域の用途制限(何が建築できるのか)
準住居地域 道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するための地域 準住居地域の用途制限(何が建築できるのか)
田園住居地域 農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するための地域 田園住居地域とは? 今後の都市農地のあり方と人口減少下における新たな土地利用
商業系 近隣商業地域 近隣の住宅地の住民に対する日用品の供給を行うことを主たる内容とする商業その他の業務の利便を増進するための地域 商業・近隣商業用途地域の建築制限(用途制限、日影制限・容積率・建蔽率)
商業地域 主として商業その他の業務の利便を増進するための地域 商業・近隣商業用途地域の建築制限(用途制限、日影制限・容積率・建蔽率)
工業系 準工業地域 主として環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便を増進するための地域 準工業地域とは?[TDRも準工業地域って知ってました?]
工業地域 主として工業の利便を増進するための地域 工業地域・工業専用地域の用途制限(何が建築できるのか)
工業専用地域 工業の利便を増進するための地域 工業地域・工業専用地域の用途制限(何が建築できるのか)

 

この記事を読んでいる方の大半は住宅建築のための土地購入が大半を占めると考えられるので、住宅に関していうと、13種類ある用途地域のうち、工業専用地域を除く用途地域で建築することが可能です。

ただし、建築物の立地をコントロールする手法は用途地域だけではなく、特別用途地域や地区計画といった用途地域とは異なる都市計画により住宅の建築を制限することは可能ですので、工場や商業・オフィスを誘導するような地域ですと住宅の建築を制限する場合がありますので一概にこれが正しいということは言えませんので注意してください。

では次に市街化区域の設定基準について説明します。かなり深いところの内容となるので、興味がある方のみご覧ください。

市街化区域の設定基準

はじめの説明で市街化区域は2つの区域があると説明しました。

  • すでに市街地を形成している区域
  • おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域

 

この上記2つの区域です。この区域ですが、政令、省令及び都市計画運用指針により設定の考え方が示されています。市街化区域はどういった地域が指定されるのか?という疑問に対する簡単な答えとしては、国勢調査でいう人口集中地区(DID)が適当かなと思います。

それから、コンビニが立地するための商業圏(沿道利用者を想定してない商圏)を有する地域と考えてもらうとちょうど良い人口規模と人口密度となります。

すでに市街地を形成している区域


※作成:Yamaken

すでに市街地を形成している区域とは、1ha(100m四方)あたり40人以上の人口を有し、かつその区域を含む50ha以内の区域内に3,000人の人口以上のエリアです。

1haあたり40人という数字は、5年に一度行われている国勢調査結果に基づくDID(人口集中)地区と同じ意味です。

なお、これまで区域区分を行わないで、これから市街化区域の指定を行う都市というのは基本的にはあまり考えられないかなと思いますので、参考に知っているくらいで良いかなと思います。

【都市計画法施行令第8条第1項第一号】
既に市街地を形成している区域として市街化区域に定める土地の区域は、相当の人口及び人口密度を有する市街地その他の既成市街地として国土交通省令で定めるもの並びにこれに接続して現に市街化しつつある土地の区域とすること。

【都市計画法施行規則第8条】
令第8条第1項第一号の既成市街地として国土交通省令で定める土地の区域は、次の各号に掲げる土地の区域で集団農地以外のものとする。
一 50ha以下のおおむね整形の土地の区域ごとに算定した場合における人口密度が1ha当たり40人以上である土地の区域が連たんしている土地の区域で、当該区域内の人口が3,000以上であるもの
二 前号の土地の区域に接続する土地の区域で、50ha以下のおおむね整形の土地の区域ごとに算定した場合における建築物の敷地その他これに類するものの面積の合計が当該区域の面積の3分の1以上であるもの
※10ha以上の一団の農用地

次に概ね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域の説明です。

概ね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域

土地区画整理事業や開発行為、市街化調整区域内における地区計画制度などにより、市街地となることが想定されている場合に編入することができますが、災害の危険性の高い地域や農用地、自然公園などといった区域は当然、市街化区域に編入することはできません。

さらに詳しい内容は、都市計画運用指針に記載されています。おそらくそこまで確認するのは学生さんくらいでしょう。一般の方は、今は市街化調整区域だが、市町村として都市政策上、必要な場合に市街化区域となる可能性が高いくらいで知っておけば十分です。


※作成:Yamaken

まとめ・補足

市街化区域とは、都市の居住者のために必要となる道路や下水道、公園といった社会インフラを整備するとともに、用途地域の指定により立地可能な建築物の用途・規模をコントロールすることで、都市の健全な発展を促すための都市計画制度の一つです。

なお、市街化区域は市街化を図ることが目的とされていることから、農地転用においては許可ではなく”届出”でOKです。

また、近年では市街化区域にあるものの経済成長期にかなり大幅な人口増加を見込んで市街化区域を設定したことで地方都市を中心に土地利用がなされていない未利用地が多く残っています。

そうした未利用地は、市街化区域の縁辺部である郊外で多く設定されていることから、人口密度の低下を招く要因として考えられており、それらの地域でのミニ開発を防ぐため、国では立地適正化計画制度をはじめとするコンパクトシティ施策に力を入れています。

ということで以上です。参考となれば幸いです。






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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】1級建築士、建築基準適合判定資格者、宅建士など 【実績・現在】元役人:建築・都市計画・公共交通行政などを10年以上経験 / 現在は、まちづくり会社を運営:建築法規・都市計画コンサル,事業所の立地検討,住宅設計など