学科試験をクリアすれば、次は令和4年9月11日(日)の設計製図試験が控えています。
今年のお題はこちらです。
「保育所(木造)」
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上記について、独学にて合格した私の視点から、独学者向けに勉強方法などを解説していきたいと思います。この記事が独学者の役に立って、独学勉強者の助けになれば幸いです。
目次
令和4年度試験の課題のおさらい
製図試験については、事前に要求図書が建築技術教育普及センターより示されています。
図書名 | 縮尺 |
---|---|
1階平面図兼配置図 | 1/100 |
各階平面図 | 1/100 |
床伏図兼小屋伏図 | 1/100 |
立面図 | 1/100 |
矩計図 | 1/20 |
面積表 | |
計画の要点等 |
(注1)答案用紙には、1目盛が4.55ミリメートル(矩計図については10ミリメートル)の方眼が与えられている。
(注2)建築基準法令に適合した建築物の計画(建蔽率、容積率、高さの制限 等)とする。
昨年度は鉄筋コンクリートでしたので2年ぶりですね。
ちなみにランクⅠが合格となるのですが、木造とRC造とではあまり大差はないと思われますので、木造の矩計図が苦手〜という方も頑張って勉強すれば大丈夫です。(表にまとめましたので参考にしてみてください。)
年度 | 構造 | ランクⅠ(%)合格 | ランクⅡ(%) | ランクⅢ(%) | ランクⅣ(%) |
---|---|---|---|---|---|
2021 | RC造 | 48.6 | 7.7 | 31.9 | 11.8 |
2020 | 木造 | 53.1 | 6.9 | 32.6 | 7.4 |
2019 | 木造 | 46.3 | 12.5 | 30.1 | 11.1 |
2018 | RC造 | 54.9 | 14.5 | 24.2 | 6.4 |
2017 | 木造 | 53.2 | 15.1 | 25.4 | 6.3 |
2016 | 木造 | 53.1 | 16.3 | 18.1 | 12.5 |
2015 | RC造 | 54.0 | 14.1 | 25.1 | 6.8 |
- ランクI:「知識及び技能」を有するもの
- ランクII:「知識及び技能」が不足しているもの
- ランクIII:「知識及び技能」が著しく不足しているもの
- ランクIV:設計条件・要求図書に対する重大な不適合に該当するもの
次項から具体的な独学の勉強方法をお伝えしていきますが、独学者にとって必須のテキストを揃えましょう。
独学受験者が用意するテキスト
これは私が実践した方法です。
はじめに準備するテキストです。
こちらは総合資格学院さんで販売しているものですが、二級建築士製図の受験のほとんどは、高校や大学卒業後の方で多くの方が手書きの製図に慣れていないと思いますので、少しでも製図は不慣れだなと思った方は購入した方が無難です。(私も購入しました。)
次に実際に解くための課題集です。
総合資格学院さんと日建学院さんにおいて発売している課題集です。課題集と標準解答例、さらには今年度の試験課題における製図のポイントなどを解説している書籍です。
基本的にはこの2つの書籍の購入で十分です。
この2つの書籍で9課題を解くことが可能ですので、9課題✖️2回=18枚程度書くことができれば、おそらく合格ラインに達していると思います。(私はこの方法です。)
それでも自分が合格ラインに達しているか心配な方や勉強する時間が十分に確保できている方は、何度もエスキスも行うか、他の出版社で出されている課題をやってみるのも手です。
次の勉強するための道具や製図試験本番で使用する道具などの説明です。すでに製図道具などがある方は読み飛ばしていただいてOKです。
勉強・製図道具の準備
基本的には自分が気に入ったものを購入するようにしましょう。
- 製図板
- シャープペンシル(0.5,0.7㎜)
- 三角定規・勾配定規(矩計図作成用)
- 三角スケール(大小)
- 刷毛(はけ)
- エスキス用紙
- 製図用紙
それから必須で準備するものは、エスキス用紙と製図用紙です。
なお、製図用紙については、上記の課題集にも添付されていますが、ペラペラの薄い用紙なので、本番に近い厚紙用紙を用いて勉強するのがおすすめです。木造用は4.55㎜方眼となります。
製図用紙については、『二級建築士設計製図用紙(木造)』が必要です。
※上記は矩計図の作成が可能。
それから、私が実際に試験に挑んだ中であった方が良いなと思ったものを紹介しておきます。
『クルトガ 』です。
クルトガ は線の太さを均一に保つことができるため、ムラがなくなり見栄えがよくなります。自分が試験官であればイメージできると思いますが、印象が良いのと悪いのでは、後者の方が不利に働くのは必至ですよね。
次にメンディングテープです。
こちらは、磁石テープを使わないで済むので、よく磁石テープを使うと、作業中にずれてしまうことがあるんですが、それがなくなるので便利になるのと同時に、定規の裏側にテープを貼ることで定規があまり汚れずに図面上でスムーズに使用することができます。
続いて、こちらの製図テンプレートです。柱を描いたり、細かな什器などを描く時に便利です。
続いて、細かい部分を消すのに重宝します。図面を描いていると必ず細かい間違いをしています。その際にささっと消す時に便利です。
勾配定規(木造で矩計図作成用)。使用しないで書かれる方もいますが私の場合は作業時間短縮のために購入しています。
なお、試験問題をチェックするために蛍光ペンや赤・青鉛筆が必要という方もいますが、机の上が煩雑になるので、私はおすすめしません。チェックする場合には、シャープペンシルで、その該当箇所を⭕️や”済”としておけばOKです。
令和4年度製図試験のポイント
製図試験の時間は5時間です。
書き上げて、重大な欠格事項などがなければ基本的に合格しますが、必ず何かしらの間違いがありますから、図面は計画の要点を含めて4時間30分で描き、残り30分はチェックの時間に回すようにするのが良いと思います。
できれば4時間10〜20分前後で書き上げる方が余裕があっていいのでしょうけど、私を含めて初心者には無理です。
ここからは建築士としての法律のプロの視点から独学で挑むポイントをお伝えします。
はじめに、独学者として合格するためにには、学校に通っていない人と比べると効率的に勉強することができないケースの方が多いため、意識して、できるだけ空いた時間を製図試験勉強に投資しましょう!!
エスキスを毎日
これはどのサイトや学校でも言っていると思いますが、エスキスだけはほぼ毎日やって、プランニングの型を頭に叩き込んだ方が効率よく勉強することができます。
少なくとも土日のいずれかは、図面を描くようにする。
午後なら午後、午前なら午前と決めて、できれば土日は2枚以上描くようにしておくと試験前に余裕が生まれて気持ち的に楽です。余裕がある場合には、平日に1枚以上描いておけば十分かなと思います。
2ヶ月あれば、24枚描くことができます。
おそらくですが、これが出来ない人が大半のため、合格できない方が半数いるのだと思われます。なので、毎日、継続して作業すれば(もちろん描いた後のチェックが必須)合格は可能だと私は考えています。
保育所とは?
保育所は、建築基準法において『特殊建築物』と判断される建築物となります。
建築基準法別表第1(2)に該当するため3階以上の階に保育所があったり2階部分の床面積の合計が300㎡以上となる場合には耐火建築物等としなければなりませんが、二級建築士製図試験の木造ですと床面積の合計が200㎡前後とされている傾向にありますから、恐らく2階部分で300㎡以上となることはないでしょうし、3階以上も考え難い(矩計図を描かせるため2階と想定)と思います。
今回の課題、近年の改正により施設数が増えている「幼保連携型認定こども園(保育所+幼稚園等)」としなかったのはちょっと不思議。
そのため、建築基準法上の耐火建築物等に関する括りとしては、「その他建築物」となりますから、利用動線や避難規定、防火上主要な間仕切り壁などの要素が大きいように考えられます。
なお、建物ボリュームについては、過去2年(令和2年と令和元年)の標準解答例をチェックすると次にようになっています。
項目 | 令和2年度試験 | 令和元年度試験 |
---|---|---|
用途 | シェアハウス+住宅 | 事務所+住宅 |
敷地面積 | 254.00㎡ | 272.00㎡ |
建築面積 | 117.46㎡ | 119.24㎡ |
延べ面積 | 225.24㎡ | 198.73㎡ |
階数 | 2 | 2 |
では、次にポイントなる法令等についてチェックしてみます。
階段
階段については、基本的には設計課題集で記載されている寸法で描けばOKですが、建築基準法では次のように規定されています。なお、バリアフリー法ての適用を受ける建築物の規模ではありませんので参考程度に記載しておきます。(課題設計集の記載の通りの幅としておけばOK)
恐らくですが、階段落下等による危険性を回避するため保育所では2階部分に子どもが利用する室を要求することは考えにくく、先生が利用する事務所用途。若しくは平屋での設計(一般的に保育所は平屋が多い)の可能性が高いと考えられます。
用途等 | 階段・踊場の幅(㎝) | 蹴上(㎝) | 踏面(㎝) |
---|---|---|---|
保育所(2階以上の場合) | 75㎝以上 (屋外の直通階段は90㎝以上) | 22㎝以下 | 21㎝以上 |
【参考】 2階部分の床面積の合計が200㎡超の場合*無いと想定 | 120㎝以上 | 20㎝以下 | 24㎝以上 |
【参考】 バリアフリー新法 移動等円滑化誘導基準 | 140㎝以上 | 16㎝以下 | 30㎝以上 |
廊下の幅
居室の床面積の合計が200㎡を超える階については廊下の幅の制限がありますが、おそらく超えないとが考えられますので気にしなくてOKかと思いますが、少なくとも余裕を持たせて設計するのが良いです。参考設計スパン:両側居室廊下=910㎜+910㎜、片側居室廊下=910㎜+455㎜
- 両側の居室の廊下:1.6m
- 片側居室の廊下:1.2m
なお、参考として、バリアフリー新法における移動等円滑化誘導基準の場合は180㎝以上(法適合義務基準は120㎝以上)が求められています。
今回の計画規模では対象外ですが、バリアフリーへの配慮は必須ですので、なるべく対応するようにします。(課題設計集の記載の通りの幅としておけばOK)
>>>参考記事
避難距離・2方向避難
建築基準法施行令第120条に該当する場合(2階部分に保育所が用途がある場合)、避難規定が適用されることから原則として歩行距離(居室の各部分から1階または地上に通ずる直通階段)は、30m以下とする必要があります。
極端な計画としない限りは心配する必要はありませんが、一応、頭の片隅くらいには入れておいた方が良いです。
>>>参考記事
また、2方向避難については、2階部分の保育所の用途があり、かつその居室の床面積の合計が 50㎡を超える場合には、2方向避難が必要となります。繰り返しの情報となりますが、通常、保育所の設計(かつ木造)において、保育所用途を2階部分に設けることは稀ですので、要求される恐れは少ないと思います。
とはいえ、絶対ではありませんので、二方向避難についての若干の知識習得は必要かなと思います。参考までに関連記事を貼っておきます。
>>>参考記事
排煙設備・非常用照明
延べ面積が500㎡を超えることが想定されないため排煙設備の検討は不要となりますが、大原則として、居室には必ず窓を設置する(採光・排煙無窓とならないために必要。)
>>>参考記事
非常用照明については、建築基準法施行令第126条の4の規定により、居室及び廊下・階段等への設置が必要となりますので、図示しなさいとする指示がある場合には、居室の中心や避難経路部分に描きます。*非常用照明設備を図面に描いた記憶はありませんので特段の要求が無ければ図示する必要性は無いと思います(記述により記載かな?と思います。)
敷地内通路
出口から敷地境界線(道路や公園、空地など)までの通路として幅員1.5m以上を確保する必要があります。
*延べ面積が200㎡未満の場合には幅員0.9m以上の通路でもOKですが、例年の傾向から、おそらく200㎡を超えることが想定されます。
敷地面積が200㎡程度に建築面積が100㎡程度、そこに駐車場などを設けることとなる場合には、通路の確保を見落としがちなので注意しておきましょう!
>>>関連記事
その他
当該地域が防火地域や準防火地域の場合、延焼のおそれのある部分についての開口部(窓・ドア)は防火設備とする必要があるので注意して下さい。その場合、防火設備と記載する必要があります(テキストの標準解答例に従えばOK)
>>>関連記事
最後に
二級建築士の製図試験は、実際に建築する規模や用途等の出題が多いことが特徴ですが、今回は汎用性の低い建築物なので、あまりやる気が出ない方もいるんじゃないかなと思いますが、設計しないからこそ、楽しんでみるのが良いのかなと思います。
疲れた時は、建築の作品集などを読んで気分転換です!!勉強にもなります。
ということで、合格を祈っておりますので、頑張ってください!!
・2022年度の課題からどういった法令に注意した方がよいか。
・独学では、どういった点に注意して勉強すればいいか。