この記事では、都市計画で決定される「地区計画」について、届出が必要なケースと届出が不要なケースを解説しています。
また、この記事ではそもそも地区計画とは何か。届出に関する内容も含めて解説します。
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目次
地区計画制度の目的は?
地区計画とは、「都市計画」の一つで、都市計画法第12条の4に規定されています。
はじめに大切なポイントとしては、地区計画は都市計画決定される点にあります。
地区計画は、学識経験者や関係団体等で構成される都市計画審議会を経て決定されているので、審議内容や結果は公に公開されております。
市町村のホームページでも都市計画情報として掲載されておりますから、Google先生で「〇〇市 地区計画」と検索可能です。
(注)自治体によっては詳細な情報を公開せず直接窓口に行かないとならない場合もあります。
市町村と住民(土地の権利者)が協働で地区内の独自のルールを定めて「まちづくり」を進めましょうというもので、住民同士のルールづくりである「建築協定」よりも重要度が”高い”です。地区計画は、様々な権利者の意向や行政のまちづくり計画に沿ってつくられるため、簡単に変更したり廃止したりできるものではないです。
次に大切なポイントとして、地区計画では、地区の目標や土地利用の方針などが記載されているので、どういった趣旨で定めたのか、確認しましょう!
この方針を確認することで、どのようなまちづくりを目指そうとしているのか一目瞭然です。
(地区計画等)
都市計画法第12条の4
都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる計画を定めることができる。
一 地区計画
二 密集市街地整備法第32条第1項の規定による防災街区整備地区計画
三 地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律(平成20年法律第40号)第31条第1項の規定による歴史的風致維持向上地区計画
四 幹線道路の沿道の整備に関する法律(昭和55年法律第34号)第9条第1項の規定による沿道地区計画
五 集落地域整備法(昭和62年法律第63号)第5条第1項の規定による集落地区計画
2 地区計画等については、都市計画に、地区計画等の種類、名称、位置及び区域を定めるものとするとともに、区域の面積その他の政令で定める事項を定めるよう努めるものとする。
さらに、「地区計画」に関しては、都市計画法第12条の5に具体的に規定されているんですが、法文が長すぎるので、ここの記事では省略します。(今回解説する届出行為とは深く関係しません)
それよりも一般実務としては重要なのは、地区計画の中で、地区整備計画が定められているかどうかです。
地区整備計画が定められている場合、市町村長へ届出が必要となります。それでは次項から説明していきます。
地区計画の届出が必要なケース
地区計画の届出に関する規定は、都市計画法第58条の2に規定されているんですが、法文だけズラズラ並べても、ただ単に法律掲載で終わってしますので、表にしてみました。
届出が必要となる建築等の行為
建築等の種類 | 注記事項 |
---|---|
土地の区画形質の変更 | ー |
建築(新築、増築、改築、移転) | ー |
建築物等の用途の変更 | 用途制限が定められている場合(用途の制限に適合しない場合に限る)※つまり、用途変更が制限に適合していれば届出不要。 |
建築物等の形態又は色彩その他の意匠の変更 | 形態・色彩等の制限が定められている場合 |
木材の伐採 | 樹林地、草地等で良好な居住環境を確保するため必要な保全に関する事項が定めれている場合 |
(建築等の届出等)
地区計画の区域(再開発等促進区若しくは開発整備促進区(いずれも第12条の5第5項第一号に規定する施設の配置及び規模が定められているものに限る。)又は地区整備計画が定められている区域に限る。)内において、土地の区画形質の変更、建築物の建築その他政令で定める行為を行おうとする者は、当該行為に着手する日の30日前までに、国土交通省令で定めるところにより、行為の種類、場所、設計又は施行方法、着手予定日その他国土交通省令で定める事項を市町村長に届け出なければならない。ただし、次に掲げる行為については、この限りでない。
一 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの
二 非常災害のため必要な応急措置として行う行為
三 国又は地方公共団体が行う行為
四 都市計画事業の施行として行う行為又はこれに準ずる行為として政令で定める行為
五 第29条第1項の許可を要する行為その他政令で定める行為2 前項の規定による届出をした者は、その届出に係る事項のうち国土交通省令で定める事項を変更しようとするときは、当該事項の変更に係る行為に着手する日の30日前までに、国土交通省令で定めるところにより、その旨を市町村長に届け出なければならない。
3 市町村長は、第1項又は前項の規定による届出があつた場合において、その届出に係る行為が地区計画に適合しないと認めるときは、その届出をした者に対し、その届出に係る行為に関し設計の変更その他の必要な措置をとることを勧告することができる。
4 市町村長は、前項の規定による勧告をした場合において、必要があると認めるときは、その勧告を受けた者に対し、土地に関する権利の処分についてのあつせんその他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
都市計画法第58条の2
届出はいつまでに行うの?・様式は?
○届出は、行為着手の30日前までに市町村長に届出を行います。
地区計画を定めている都市計画課などの都市計画部局に提出となります。
なお、変更する場合も同じです。*届出書は正本・副本の2部を準備します。
○様式は、親切な市町村であれば、ホームページに掲載してくれていますが、たまに「法律どおりです」とか言われることがあります。
どういうことかというと、省令(都市計画法施行規則)で規定されているからです。つまり様式は国が定めています。
届出様式については、「都市計画法施行規則 別記様式11の2、11の3」に掲載されています。
補足:届出に必要必要書類
届出に関しての必要書類などはこちらの記事にまとめています。
地区計画の届出が不要なケース・条例化に注意
届出不要な行為は、都市計画法第58条の2第1項各号に規定されています。
届出が不要な建築行為等
各号 | 内容 | 内容の詳細 |
---|---|---|
一号 | 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの | 仮設(建築物、工作物)、既存建築物等の管理のための土地の区画形質の変更、農林漁業を営むための建築・土地の区画形質の変更等・・・令第38条の5 |
二号 | 非常災害のため必要な応急措置として行う行為 | 非常災害のため必要な建築等 |
三号 | 国又は地方公共団体が行う行為 | 国、都道府県、市区町村等 |
四号 | 都市計画事業、これに準ずる行為 | 都市計画施設の管理者が都市計画に適合して行う行為、土地区画整理事業、市街地再開発事業等・・・令第38条の6 |
五号 | 法第29条第1項の許可を要する行為その他政令で定める行為 | 令第38条の7に規定されていますが、重要なのは、制限等の内容が建築条例(建築基準法第68条の2第1項)化(全て)されている場合(一部でも建築条例化されていなければ届出必要) |
地区計画が建築基準法に基づく条例化(=地区計画条例)が行われている場合には、届出は不要となり、代わりに建築確認申請において審査されます。地区計画条例についてはこちらの記事をご覧ください。
補足記事:地区計画条例
届出しなかった場合の罰則等はあるの?
- 地区計画の内容が適合していない場合、市町村長から勧告を受ける可能性があります。
- 地区計画の届出を行わなかった場合や虚偽の届出を行った場合には20万円以下の罰金となる可能性があります。*都市計画法第93条
次の各号の一に該当する者は、20万円以下の罰金に処する。
都市計画法第93条第一号
一 第58条の2第1項又は第2項の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者
*第58条の2が地区計画の届出に関する規定。
なお、地区計画が自治体により建築条例化されている場合は、自治体の条例による罰則があります。
補足:建築物が地区計画の区域外でも届出は必要?
イメージとしては、次のようなケースです。建築確認申請上の敷地には地区計画がかかっているけど、建築物にはかかっていない。このような場合にも地区計画の届出自体は必要となります。