この記事では、「どのようにして用途地域は決められるのか」、「用途地域の変更は簡単にできるものなのか」などを都市計画のプロの視点から解説していきます。
ちょっと専門的な話かもしれませんが、自分が住んでいる都市の構造を知るきっかけになると思う記事です。
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建築基準法や都市計画法といった都市づくりに欠かせない法律は、複雑かつ難解なので理解に苦しみますよね。そのような方のために、法律を上手に活用してビジネスや生活に活用してもらいたいと思いつくったブログです。
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用途地域はどのように決定されるの?
過去の業務経験から都市計画にも精通している私(自称です。)です。実務をこなしていたからこそ分かることもあり、誰とは言わないですが、ふわふわとした教授達の都市政策論を語る人が苦手だったりします(あなたは実務やって無いじゃんと・・・)。
全体的な都市政策を語る時には必要だったりしますが、理念だけは具体的に都市をマネジメントすることができない部分があります。そのため、緻密な都市計画の積み重ねによって都市をコントロールし、その中でもマクロ的な都市計画手法である用途地域は都市計画の基本となります。
用途地域は、地域地区の一つで、全部13種類あります。用途地域を定めることによって、建築基準法第48条の規定により建築物の用途が制限されます。
▶︎▶︎▶︎用途地域制限一覧表はこちらです。
この用途地域ですが、用途地域の種類によって建築することができる建築物の用途が決まっているため、ある程度の土地利用をコントロールすることが可能です。
なお、実務上はこれに地区計画や特別用途地区を定めて、さらに特定の用途を制限します。
ちなみに最近では、都市機能を誘導する観点から特定の用途(住宅以外の都市機能)を誘導する特定用途誘導地区なるものを出来たりと人口減少社会を見据えた都市づくりのシフトしつつあります。
では、その用途地域ですが、どのように決定するかは、基本的には二つの計画と一つの指針によって決めれます。もちろん、厳密には、両計画のみならず、中心市街地活性化基本計画や環境基本計画などの関連計画との整合性も求められれます。
都市計画区域マスタープランは、少し理解が難しいですが、都市計画区域内の整備、開発及び保全の方針を定めているものです。いわゆる都市圏によって都市計画区域が決まっているとイメージしてもらえればいいかなと思います。
このプランの中で、都市計画の目標と土地利用の方針が定められ、それによって、どのような土地利用を進めていくか一定の方針が示されます。
具体的にはフレームといって、人口、産業、商業等の将来見通しに基づいてどの程度の面積が必要かなどを検討するんですが、そこまで細かい内容は知る必要はないので、この区域マスタープランで土地利用の大枠が決定されると考えてもらえれば良いと思います。
例えば、駅前だったら商業利用を促進しようだったり、郊外の住宅団地であれば、住環境を保護していこうといった具合です。さらに市町村都市計画マスタープランにおいて、よりきめ細やかに都市全体の土地利用の方針と地域ごとの土地利用の方針が決められます。
なお、両マスタープランについてはこちらの記事でも解説しています。
これに基づき、示された土地利用の方針に基づき適正な土地利用を図る用途地域を定めます。
近年では、人口減少と郊外への開発圧力の減少によりどの地方都市も新たに住宅団地をつくることは少なくなったので、『新たな市街地をつくるぞ!』みたいな、新たに田畑に用途地域を設定することはなくなりました。
ほとんどの用途地域決定は、既成市街地のうち、当初考えていた土地利用にならないケースの適正化(例えば工業系を誘導しようとしたが、住宅団地となってしまった工業地域を住居系用途地域に変更することなど)の方が多いと思います。
がしかしながら、土地利用の方針だけでは、実務上の用途地域の指定・変更の検討はできません。
次に必要となってくるのが、都市計画運用指針です。
自治体によっては、この運用指針に基づく独自の用途地域設定方針を定めている例がありますが、基本的にはこの指針に基づいて変更する理由としての妥当性などを検証するために利用します。
どのようなケースの場合に指定するべきか的な考え方が示されています。
実際には、綿密な将来予測等の計算を行なって用途地域の設定を行いますが、まとめると次のように定められます。
つまり、都市計画区域マスタープラン及び市町村マスタープランにおいて土地利用を図ることが明確に示されることが、用途地域が決定される最も重要なポイントと思われます。
ここで補足的な話をしたいと思います。
現代において、市街化調整区域を市街化区域にして土地利用の誘導を図るのは正しいのか
少しタイトルとしては長くなってしまいましたが、よくある話として、
『まとまった土地がないので、大規模な土地利用を図りたいから市街化調整区域を市街化区域にして欲しい。』
『どれだけ公共投資(将来の維持管理を含む)が必要か分かっているか!?』と言いたい。
そりゃあ、まとまった田畑の土地を使えば、権利関係も複雑ではないし、土地は安い、さらに整備がしやすいから当然、そういった土地が良いに決まっている。
また、『うち少子化が進んでいるから住宅地として活用できるようにしたら人増えるねん』という要望。
全部、自分勝手な都合でしかないです。
結論的には、99%ありえない考え方だと思います。
ただし、残り1%については、人口増加が進んでいる都市もあるので1%は正しいという場合もありますけどね。なお、上位計画である両マスタープランに位置付けられ、尚且つ、他法(農用地区など)に基づく制限が設けられていないのであれば、指定される可能性はゼロではないと思います。
それでは次に変更は容易に可能かという話です。
用途地域の変更について
用途地域の変更によって、既成型となるのか緩和型になるかによって併せて行うその他の都市計画手法も異なります。
規制型とは、例えば、第一種住居地域だったところを第一種低層住居専用地域にするといったことです。
緩和型とは、例えば、一種住居地域だったところを準住居地域にするといったことです。
この場合で注意する必要があるのが規制型です。
規制型とする場合、現時点では建築することができる用途のうち一部の用途は建築することができなくなるため、一定の権利に制限を課すこととなることから、地権者などの権利者からはあまり良く思われないケースもあります。
既存不適格建築物となれば、一定の増築等は可能なんですが、とはいえ、既存不適格は特例であって、現実には制限される用途となるので、快くは思わないですよね。
一方で緩和型は、緩和によって誘導したい特定の用途以外の用途も誘導してしまうケースがあるため、場合によっては、住環境が悪化してしまう可能性もあります。その場合は地区計画をあわせることで特定の用途を制限することが可能となっています。
いずれの場合も用途地域を変更すると決まった後の実務上の話ですが、事業者や住民の中には用途地域を変えて、こういった街にして欲しいと考えている場合もありますよね。
街区単位で言えば都市計画提案という手法もありますが、そうではない方法とすると、次の方法があります。
用途地域は市町村が決定するものですので、市町村都市計画マスタープランにまちづくりの考え方を記載(手法は用途地域の変更など)してもらうことで、将来的な変更も可能となります。また、投資効果の高い土地利用の計画があるのであれば、その計画を持って市町村の都市計画課に相談した方が良いと思われます。
(記載するかどうかの判断は市町村が最終的に行うので、妥当性のある要望であれば聞き入れてもらえるはず)
どのケースでも容易に用途地域を変更することはできないですが、上位計画に即し関連計画との整合性が図られており、かつ変更する理由に妥当性があり、また、それによって都市全体の活力が向上されるなどの経済的な効果があるのであれば変更は可能です。
本記事のまとめ
用途地域は、両マスタープランの土地利用の方針等に基づいて、都市計画運用指針を参酌(さんしゃく)しながら指定されます。
また、用途地域を変更する場合には規制型となるのか緩和型となるかでどのような都市計画手法を併せるかなどもポイントとなります。
用途地域の変更により本来規制されるべき用途が立地することがないよう制限を設けながら誘導を図りたい用途を積極的に立地させていくことが今後の人口減少社会においては重要と思われますので、自身と関係する自治体の都市づくりに注視すると面白いかもしれません。
今回の記事は以上となります。皆さまの参考となれば幸いです。
▶︎▶︎▶︎都市計画決定に関する手続きについてはこちらの記事をご覧ください。
*立地適正化計画を含む(都道府県・市区町村)