この記事では、2022年6月17日に公布された「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」等のうち、1年以内に施行予定(令和5年4月施行)の建築基準法を解説しています。
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目次
4月11日追記:屋根リフォームが大規模修繕・模様替えの対象外
令和5年3月末に国から技術的助言が発出され、屋根葺き材のみの改修は大規模の修繕や模様替えの対象外となりました。詳しくはこちらの記事に書いております。
さらに詳しく
3月23日追記:解説動画が公開
令和5年4月1日改正に関して国土交通省が解説動画を公開しました!
(YouTube動画リンクはこちら:https://www.youtube.com/watch?v=qHQn6t-nSSI)
2月15日追記:改正告示案(大阪北区火災関連の一部)
改正告示案のパブコメが実施中です。
>>>建築基準法施行令の一部を改正する政令の施行に伴う関係告示の規定の整備に関する意見募集について
1年以内施行(2023年4月1日)は採光だけじゃない
古巣である国交省さんには申し訳ないのですが・・・
公表している資料をみますと、居室採光の緩和方法のみが記載されているので、自分自身で詳細に調べないと1年以内施行の内容がわからないようになっています。
・・・報道向けプレスなので仕方ないんですけど、それでも採光緩和しか分からないということで、このブログで簡単に解説しています。
ということで、次項において、1年以内施行の法律・政令(施行令)・省令(施行規則)・告示を一覧にしてみました。
なお、おそらくですが、今後、建築士や審査機関向けの説明会が実施されるでしょうかから(たぶんされる)詳細(解説付き)が分かるかなと思います。
また、次の赤枠がめちゃめちゃ重要!!!
ここがとっても重要です!!
実は、令和4年建築物省エネ法等の改正に伴う建築基準法政省令変更にあわせて、脱炭素とは”別に”近年の技術研究成果、大阪北区火災などを踏まえた建築基準法の政省令等の改正も同時に進んでいます(令和5年4月1日施行予定)。
ご存知の方もいると思いますが、昨年10月に実施されたパブコメによると令和4年12月に改正政令公布の予定となっておりました。(建築面積の緩和、定期報告対象の強化、防火避難規定の緩和等)
しかしながら、今のところ国交省から発表がなく(閣議決定未了)、官報上でも改正政令は確認できませんでしたので、現時点では工場及び倉庫の建築面積緩和(告示)のみ、パブコメが実施済みの状態です。
このため、現時点では、政令の改正が必要となる定期報告義務の対象建築物などの情報は下記の一覧表に反映できていません。おそらく、通常国会召集が1/27を予定しているようですので、その前には公布されるのではと予測しています(ハズレちゃったらごめんなさい)2023年1月末時点で政令公布が行われていないようです(閣議決定未了)。当初2022年12月末に政令公布の予定でしたので、もしかしたら4月1日施行はあやしいかもしれません。国の動向が分かり次第、このブログでも情報提供します。
2月7日の政令が閣議決定されました。
プレス資料を読みますと、2月10日公布、予定とおり4月1日施行とのことです。
>>>参考記事※令和5年4月1日施行予定の政省令及び告示のパブコメ(令和4年10月に実施されたパブコメのうち、定期報告対象の建築物の強化の概要を解説しています)
その他、この一覧に記載してある以外にも改正(軽微なもの)があるので留意が必要です。
2023年4月1日施行予定一覧
[表に関する補足]
令和4年10月実施の定期報告対象建築物の見直しなどの政令については、工場及び建築面積の緩和についてのみパブコメにより情報が判明しているため記載しています。
概要 | 法等 | 改正の概要 | 公布 |
---|---|---|---|
住宅等の居室の採光等の緩和 | (改正) 法第28条第1項 施行令第19条第3項 | ・照明装置が設置された住宅等の居室の採光面積の緩和 ・床面50lx以上は1/7→1/10に緩和 (注)告示にて代替措置がルール化(2月上旬公布) | 済 |
建築面積の緩和 (工場・物流倉庫) | (改正) 施行令第2条第1項第2号 | ・工業及び倉庫の積卸し等の業務の為に設ける軒等の建築面積算定の緩和 ・一定条件に該当する庇等は端から5mの範囲を建面に非算入 (注)告示にて緩和措置がルール化(1月下旬公布) | 済 |
容積率の緩和❶ | (新設) 法第52条第6項第3号 規則第10条の4の4 規則第10条の4の5 | ・住宅等のうち給湯設備に関する容積率算定からの除外 *建築物省エネ法関連 *特定行政庁の認定が必要 | 済 |
容積率の緩和❷ | (新設) 法第52条第14項第3号 規則第10条の4の6 | ・省エネ設備等の工事で構造上やむを得ないものの緩和 *建築物省エネ関連 *特定行政庁の許可が必要 | 済 |
建蔽率の緩和 | (新設) 法第53条第5項第4号 規則第10条の4の8 | ・省エネ設備等の工事で構造上やむを得ないものの緩和 *建築物省エネ関連 *特定行政庁の許可が必要 | 済 |
絶対高さ制限の緩和 | (新設) 法第55条第3項 規則第10条の4の9 | ・太陽光及び風力施設等を屋根に設置した場合の高さ緩和 *建築物省エネ関連 *特定行政庁の許可が必要 | 済 |
高度地区の緩和 | (新設) 法第58条第2項 規則第10条の4の15 | ・太陽光及び風力施設等を屋根に設置した場合の高さ緩和 *建築物省エネ関連 *特定行政庁の許可が必要 | 済 |
一団地認定の緩和 | (改正) 法第86条第1・2項 | ・大規模の修繕及び認定が追加され、省エネ改修等を行う場合には、一団地認定が可能 *特定行政庁の認定が必要 (注)無接道の建物についても省エネ改修が可能 | 済 |
申請様式の変更 | 建築確認申請様式の変更 | ・上記の改正に伴い建築確認申請様式が変更 *容積率の記載部分が変更 | 済 |
>>>脱炭素に関連する改正概要(図やポンチ絵)は国交省の公式ホームページに記載されているので、国交省公式のリンクを貼っておきますので参照してみてください。https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000163.html
上記の表には記載しておりませんが、定期報告対象の見直し(強化)が予定されています。
現時点では、改正概要のパブコメのみで政令の公布は未ですが、当初予定では令和5年4月1日施行とされていましたので自治体担当者の方々は条例・細則改正などの準備、加えて、基準の強化程度に応じて事務所ビルオーナーへの説明などが必要となると考えられます。
また、3階建て200㎡以上の建物オーナーは自身の所有オフィスビルが定期報告の対象となる可能性を視野に入れておく必要がありそうです。
まとめ・特に重要な改正
令和5年4月1日施行については、現時点における重要な改正としては、住宅等の居室の採光緩和と工場及び倉庫のうち荷捌きスペース(庇部分)の建築面積緩和、これらに伴う確認申請様式の変更となります。
その他、耐火性能に関する技術的基準の合理化(60分刻みから30分刻みに変更さ)、無窓居室の合理化(緩和みたいなもの)、定期報告対象の見直し(強化)と思われるところです。
- 照明設備を設置した場合の住宅等の居室の緩和(法第28条第1項)
→政令・告示公布済
≫≫≫【No.1 採光】2022年建築基準法・建築物省エネ法改正の内容を分かりやすく解説 - 工場及び倉庫のうち荷捌きスペース(軒部分)の建築面積緩和(施行令第2条第1項第2号)
→政令・告示公布済
≫≫≫【工場・倉庫限定の特例軒等とは?】4月1日施行の建築面積の緩和告示が公布 - 定期報告対象の見直し(施行令第13条の3第2項、第16条第2項等)
→政令未公布、改正概要は令和4年10月にパブコメ実施済
≫≫≫【定期報告の対象が強化】3階建ての事務所でも定期報告の対象となる予定*パブコメ中
いずれも政令及び告示等において基準が定められます。
現時点では、法と施行令の一部が確定している段階となっており、一部の政令、省令と告示はパブコメ時の情報しか知ることができません。
施行予定日が4月1日とされているので、よほどのことがない限りは施行されると思います。
*パブコメでの意見(特に業界)を受けて変更する可能性も有
最後に容積率緩和に省エネ設備が追加されるため建築確認申請様式も変更となります。2023年4月1日からは旧申請様式は使用できなくなりますので注意が必要です。
最後に繰り返しですが注意点です。*脱炭素改正以外の改正前項でお伝えしましたが、令和4年10月に実施されたパブコメ(脱炭素改正法とは別の改正)では、12月公布予定とされた政令が現在閣議決定されていない状況のようです。
定期報告対象の変更や防火避難規定関係の改正が予定されているのでかなり重要です。政令の公布の情報があればこちらの記事を更新する予定です。
もしかしたら、パブコメの結果(業界からの意見)を受けて一部の政令は改正しない若しくは時期を延ばすなどの判断があったかもしれません。
スケジュール的には、遅くても1/27頃までには政令を閣議決定して施行日は脱炭素と同じく4月1日施行にするはずです。あくまでも予想ですので、ハズレってしまった場合はご了承ください。
2/7追記:政令が公布されました!予定とおり203年4月1日施行となります。
最後に、省エネ設備等の設置に伴う高さ、容積率及び建蔽率緩和については特定行政庁の認定及び許可が必要となるので、現時点では通常の確認申請以外の複雑かつ煩雑な手続きが必要となりますからそこまで気にしている建築士の方は少ないのかなと思います。
とはいえ、省エネ法の改正により2年3ヶ月後には更に基準が強化されていきますから、太陽光をはじめとする省エネ設備の設置によって、高さや容積率等の限界突破が必要なケースが生じてくるのかもしれないです。
ということで以上となります。参考となりましたら幸いです。
≫≫≫令和4年に改正公布された建築基準法等の全体版はこちらです。
解説記事:【採光無窓】令和5年4月1日から無窓居室の非耐火性能・不燃性能規定の対象が拡大
解説記事:【定期報告の対象が強化】3階建ての事務所でも定期報告の対象