この記事では、大規模集客施設の以下の4点について解説を行っています。
- 大規模集客施設とは?
- 大規模集客施設が立地可能な地域と立地不可の地域
- 駐車場共用の場合の取り扱い
- 大規模小売店舗立地法との関係性
こんにちは。YamakenBlogです。
当ブログでは、過去の建築・都市計画行政職員&コンサルの経験を生かして、難解な建築法規や都市計画法規などに関して解説を行っています。良かったらブックマーク登録などしていただけますと嬉しいです。
大規模集客施設とは?
大規模集客施設とは、アウトレットモールやイオンモール、コストコのような店舗等をイメージしてもらうと分かりやすいです。
正式には、建築基準法別表で規定されています。
建築基準法では、次のように書かれています。
比較的床面積が1万㎡超であることが多い、ショッピングモールやアミューズメント施設、パチンコ店や遊戯施設などが該当します。
ただし、劇場、映画館、演芸場及び観覧場の用途に供する部分については、客席の部分に限られます。例えば、映画館であれば、建物全体の床面積が1万㎡超であっても客席の部分の面積が1万㎡以下であれば大規模集客施設には該当しないことになります。
大規模集客施設の立地が可能な地域と立地不可の地域
大規模集客施設が立地可能な地域は、近隣商業地域、商業地域、準工業地域の3つの地域+都市計画区域外となります。
なお、平成19年の都市計画法改正(平成19年11月30日施行)以前では、上記の3つの地域に加えて、第二種住居地域、準住居地域、工業地域、白地地域の4つの地域でも建築することが可能となっていました。
平成19年施行の改正都市計画法は、まちづくり三法(都市計画法、中心市街地活性化法、大規模小売店舗立地法)の改正の際に実施されたもので、郊外の開発抑制と中心市街地への都市機能が誘導が主な改正。
なお、中心市街地活性化法に基づく計画の認定を受けている自治体については、準工業地域についても大規模集客施設の立地が制限されている。(特別用途地区等が活用されている。)
まちづくり三法は失敗という指摘が多いですが、三法改正以前から郊外開発が急速に進んでいたことや、憲法上郊外での開発規制を厳しくすることができない都市計画法上の制限、当時の一極集中型の市街地活性化、さらには立地法の基準(指針,届出行為)では郊外立地が規制されるものではなかったことがあげれます。
現代は、これらを教訓に多極ネットワーク型コンパクトシティを目指しています。
大規模集客施設の立地が不可能な地域は住居系用途地域(一種低層、二種低層、田園住居、一種中高層、二種中高層、一種住居、二種住居、準住居地域)、工業地域、工業専用地域、市街化調整区域、白地地域となります。
ちなみに、近年は自治体によるコストコ誘致合戦が盛んですが、コストコは大規模集客施設に該当するため上記の3地域以外では原則として建築不可です。
ただし、自治体が所属都市圏内の他自治体と調整・理解を得て、更に農振法等の他法令の制限を受けない土地に限った話ですが、、、
行政計画(都市計画マスタープラン・都市計画区域マスタープラン・立地適正化計画)に位置付け(住民の理解が必要)、用途地域の変更や市街化調整区域内の地区計画を指定することにより立地することが可能です。
最近の事例では山梨県の南アルプス市が良い例なので参考記事をあげておきます。
複数の建物が駐車場を供用する場合
郊外のショッピングモールや総合スーパーなどで多い例です。駐車場を共用して複数の建物が立地し、それらは回遊性があったり、一体的なモールを形成しているケースがあります。
建築基準法上は、道路や河川、鉄道などにより分断されている土地については同一敷地とは言いません(=用途上可分となる)が、大規模集客施設の立地については、集客施設の立地が都市構造へ与える影響が大きいため別の考え方が国の技術的助言として示されています。
最終的には各自治体が判断しますが、この技術的助言を失念しているケースもあるので、民間事業者の方は後々違法だと言われないよう立地を検討する場合には注意が必要です。
ショッピングモールのように、床面積が1万平方メートル以下の集客施設を複数棟建築する場合であって、例えば、2棟以上の商業施設が駐車場等の施設を共用することにより一体的な利用がされる場合等、個別の事案の利用形態等からみて用途上不可分の関係にある場合には、これら2以上の建築物の床面積の合計により判断し、これが1万平方メートルを超える場合には改正法による立地制限が適用されることとなること。
「都市の秩序ある整備を図るための都市計画法等の一部を改正する法律 による都市計画法及び建築基準法の一部改正について(技術的助言)国都計第82号 国住街第161号 平成18年11月6日」
駐車場を共有し、かつ施設設置者・管理者が同一のケースでは、複数の建物によりショッピングモールを形成していると言わざるを得ないかなと思います。
というのも、建物内に複数用途があるケースとそうではなく棟が別れているケースを比較しても設置者・運営者が同一であれば中身(実態)に違いはないからです。いずれも一体的に集客を図ろうとする考えは同じ。
※大規模小売店舗立地法上で同一施設群で交通や騒音、環境配慮を検討しているのであれば、建築基準上も同一のものとして立地可能か判断するのが妥当です。
※床面積的に立地が難しいという場合には、各自治体の都市計画課へ相談してみてください。地方創生や地域課題の解決等につながるケースでは都市計画提案等により用途地域等の変更も十分に可能です。
大規模小売店舗立地法との関係性
大規模小売店舗立地法は、店舗面積が1,000㎡超の小売店舗を対象として、立地場所での駐車場の台数や交通処理、周辺環境への配慮等への基準(あくまでも指針)への適合状況を確認するものです。
*対象店舗は小売業
都道府県への届出行為に過ぎない(指示に従わない場合は勧告・公表等あり)。
一方で、建築基準法上の大規模集客施設は、小売店舗を含めた店舗であり、なおかつ店舗面積ではなく床面積(映画館等は客席の面積)で判断され、届出行為ではなく建築確認申請が必要となる。
なお、市街化調整区域内で地区計画を指定して大規模集客施設の立地を認めた場合には、都市計画法に基づく開発許可に加えて建築確認申請が必要となる。
大規模集客施設の立地が可能な用途地域まとめ
まとめると次にようになります。店舗に限ってまとめています。
*一種低層では兼用住宅のみ可能
*準工業地域:地方都市では特別用途地区等に大規模集客施設の立地制限を行っている。
*市街化調整区域:マスタープランに位置付けかつ地区計画により建築が可能となる
郊外開発規制は厳しいように思いますが、完全に抑制しているわけではなく、自治体毎(または都市計画区域毎)のまちづくり計画(マスタープラン・都市計画区域マスタープラン)に基づき総合的に立地の可否を判断しています。
そのため、現状の地域地区等が立地不可なエリアでも自治体のまちづくり上、将来的にどのような土地利用を想定しているのかによっては、自治体の計画とベクトルが一致することで立地も可能となる可能性があります。
以上です。大規模集客施設の理解を深めることができれば幸いです!
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劇場、映画館、演芸場若しくは観覧場又は店舗、飲食店、展示場、遊技場、勝馬投票券発売所、場外車券売場その他これらに類する用途で政令で定めるもの(場内車券売場及び勝舟投票券発売所)に供する建築物でその用途に供する部分(劇場、 映画館、演芸場又は観覧場の用途に供する部分にあっては、客席の部分に限る。)の床面積の合計が1万平方メートルを超えるもの。