【都市計画講座】南アルプス市にコストコが立地できた理由

2025年春頃に南アルプス市の南アルプスIC付近にオープン予定のコストコ。

なぜ、人口7万人の南アルプス市に立地することができたのか。その理由について都市計画の視点から分かりやすく解説を行っています。




コストコの出店条件

*引用:コストコ公式ページ

コストコの出店条件はコストコ公式ページにて次にように書かれています。

  • 半径10kmの人口が概ね50万人以上
  • 企業が多い地域
  • 敷地面積 15,000坪以上(ガスステーション用敷地を含む)
  • 建築面積 約4,500坪
  • 用途地域=準工、商業、近隣商業(売り場面積1万㎡超)*市街化調整区域内でも行政の許可があれば可
  • 駐車場収容台数 800台以上
  • 車のアクセスの良い物件
  • 購入・定期借地(40年以上)・建貸
    ※引用:https://www.costco.co.jp/AboutCostco

過去記事でも出店条件の解説を行っていますのでよかったらあわせてお読みください。

コストコさんが公表している出店条件ですと、なぜ南アルプス市に立地できたのか不思議に思う方も多いのではないかと思います。その答えの一つに都市圏という言葉があります。

都市圏は複数の行政区域(市区町村)で構成されます。鉄道網や道路交通網が整備される以前は、主に明治初期の旧市町村単位(徒歩で半径3km)が生活の単位でした。

それが、交通網が発達したことで一人あたりの移動範囲が飛躍的に伸び市街地拡大が起きたことで一つの市町村の行政区域を超えて都市が形成されるようになっています。

そしてこの都市圏を見分ける方法の一つとして都市計画区域があります。

都市計画区域の範囲は都道府県が定めます。基本的には合理的な都市計画を行うために実態の生活圏にあわせて都市計画区域を指定することが多いですが、自治体によっては諸事情により再編が遅れているケースもあります。

南アルプス市の場合には、県の計画(区域マスタープラン)では甲府盆地内の甲府都市圏の一つの自治体の一つとなっていますが、都市計画区域上は一体とせず分けられています。

人口7万人の市に立地できた理由

南アルプス市自体は人口7万人程度ですが、甲府盆地に広がる市街地により約50万人都市圏を構成しています。

南アルプス市自体は非線引き都市計画区域の「南アルプス都市計画区域」です。

なお、前項で述べたように、実質的には甲府市を中心とする甲府都市圏(甲府盆地7都市計画区域マスタープラン)として、都市圏の構成市町村の一つとなっています。

また繰り返しとなりますが、市町村の計画ではそれぞれの市町村がマスタープランを作成しているものの、市町村マスタープランの上位計画である都市計画区域マスタープランでは、次の7の都市計画区域を合わせて一つの方針としています。

都市圏名(都市計画区域)区域人口(千人)
甲府都市計画区域286.2
峡東都市計画区域58.9
韮崎都市計画区域37.8
南アルプス都市計画区域69.5
笛吹川都市計画区域76.1
市川三郷都市計画区域12.0
富士川都市計画区域13.6
合計(7都市計画区域、8市3町)554.1
*出典:甲府盆地7都市計画区域マスタープラン,令和4年都市計画現状調査

なお、甲府都市圏の面積は約4.9万ha(コストコの立地条件では店舗中心から約3.14万haに概ね50万人)の中心である甲府市と南アルプス市は約12kmしか離れていないです。

自家用車による移動時間として30分程度となります。このため甲府都市圏は、人の1日あたりの移動時間の平均がおよそ1時間だとするマルケッティ定数によれば、比較的人口が多く魅力的な地域であることが分かります。

白地農地を活用

*引用:南アルプス市

6次産業化の施設として観光型農園を展開していた跡地(約12ha)を活用しています。そのため、都市計画上の用途は白地です。農用地や保安林、自然公園などが指定されていなければ何でも建築できます。

なお、白地を何でもアリにしていた結果、都市の拡散を招いたため平成19年の都市計画法の改正により床面積1万㎡超の大規模集客施設(コストコやイオンモール、アルトレットモールなど)の立地が制限されました。

今回の土地は白地のため本来であればコストコは立地できません。

しかしながら、今回は開発計画にあわせて都市計画法上の地区計画を指定することで床面積1万㎡超の施設立地をできるようにしています。
*南アルプス市の地区計画>>>https://www.city.minami-alps.yamanashi.jp/docs/14094.html

*白地であっても地区計画(開発整備促進区)を指定(地区計画の指定権者は市)することにより、建築基準法第68条の3第7項が適用されることで白地の建築制限(大規模集客施設)が適用除外となります。

支援制度の充実

南アルプス市では開発事業者に対して支援制度を充実させています。

特に基盤整備費用として5億円を限度として市が開発行為を実施(5億超の部分は事業者負担)するという手厚い支援です。開発事業者からすれば市がインフラを整備してくれるのは初期コストの圧縮、早期の造成着手・造成完了につながるため嬉しいはずです。

加えて、地代軽減措置、事業投下固定資産の2%交付(産業立地奨励金)、雇用創出奨励金などが用意されています。

>>>開発公募時のパンフレット(https://www.city.minami-alps.yamanashi.jp/fs/9/9/2/9/8//12ha___.pdf

まとめ

立地のための好条件が揃っていたことが大きな要因です。
南アルプス市が開発予定地の立地性を十分に活かして公募を行った結果です。ちなみに公募して誰も手があげないのでは格好がつかないので予め公募前に唾付はしているはずです。

  1. 概ねの商圏人口として約50万人以上を確保できていること。
  2. 市街地に比べて低廉な地価の白地地域の土地を市から借地できること。
  3. 中部横断自動車 南アルプスICというアクセス性が良いこと。
    *物流配送上のアクセス性も良い
  4. 約12haの6次産業跡地(観光農園)という新たな開発が容易な土地であったこと。
  5. 白地地域という本来立地できない地域であっても行政支援により立地可能となったこと。
  6. 基盤整備を行政が実施するなどの支援制度が充実していたこと。

なお、南アルプス市によると、今回の開発では、コストコの立地以外にも「山と暮らす街」やスマートシティなどをテーマとして、「農産物直売所とレストランが融合したグローサラントや南アルプスの体験と観光のポータルとなるアウトドアセンターを中心に、地域の農や食と繋がるマーケット、シェアオフィス、櫛形山と連携したMTB(マウンテンバイク)コースなど、地域の魅力を発信する「地域交流施設」を予定」しています。

*引用:南アルプス市(https://www.city.minami-alps.yamanashi.jp/docs/12378.html

私個人としては、どちらかというと、交流ゾーンの方が南アルプスの自然との共生のテーマと整合しているので完成したら見学に行きたいなと考えています。

都市計画の視点から・・・

ここからは都市計画の視点からコストコの立地について話していきます。

少し批評の部分があるので苦手な方はご遠慮ください。

今回の南アルプスの開発事業、コストコの立地場所以外にも白地農地らしく農と山がテーマとなった交流ゾーンが整備されます。

コストコよりも楽しみの方もいらっしゃると思います。南アルプス都市計画マスタープランでもこのエリアは果樹園ゾーンとしているので整合が図られています。

一方で、大規模集客施設の立地自体は市町村マスタープランと不整合。

ただし、県作成のマスタプランでは、「インターチェンジ周辺などにおいては、周辺環境との調和に配慮しながら、地区計画を定めることにより、都市基盤を有効に活用した計画的な土地利用を図る。」と記載しているので概ね整合している。*
加えて、南アルプス市は立地適正化計画を作成していないためOK

発事業者を公募する前に策定された南アルプス市都市計画マスタープランを2007年作成のまま放置しているので修正が必要ですね。

話を戻して、今回の開発公募ですが、交流ゾーンがなければ熊本の立地方式とやり方がほぼ一緒なので近隣市町村への影響も考慮した方がいいなと思いました。

過去記事はこちら

というのも甲府都市圏内で線引きを実施しているのは、甲府市、甲斐市、中央市及び昭和町のみでその他の隣接市町村は非線引きです。

線引き都市に隣接する非線引き都市での白地地域での無秩序な開発行為は、全国で問題(千葉県八街市の児童死傷など)とされるものの一つ。本来なら区域再編で一つの都市計画区域にするか合併・連携するのが土地利用をコントロール上で合理的です。

山梨県が作成する区域マスタープランは7区域で一つとしているので、県としては、都市圏内の市町村のまちづくりの方向性を調整したいんだろうなというのは感じます。おそらく今回の立地に関しても他市町村から意見があったはずです。

結果的には甲府都市圏内の自治体は了としているとは思いますが、折角、区域マスが7都市計画区域一つなので全体で線引き導入すればもう少し近隣自治体に配慮できるんじゃないかなと思います。

近年、道路交通網の発達、移動スピードの向上などで市街地が拡大しています。

従来の行政区域は管理上の区域でしかなく日常生活の実態に即していないのが現状です。そのため、都市圏内の市町村間で利害調整する仕組みが必要だなと感じます。一部、広域組合が設立されていますが、都市計画を含む多くの行政施策の分野では調整機能は十分ではないのが実態です。

まちづくりについての原則論はあります。しかしながら都市ごとに異なる目標があり、それぞれの方針のもと個性のある都市圏がつくられていくことは良いことです。

まちづくりに正解はないです。それぞれの都市ごとに異なる方針に対して住民が理解・遵守していれば一見して、外部人が経済合理性に欠くまちづくりとして指摘したとしても、それが結果的に都市の顔や個性となります。

ですので、なおさら、同一都市圏内の必要な資源の奪い合いに発展しないような仕組みの導入(広域的な見地からの利害調整、全体方針の作成など)が求められていると感じるところです。

それではまた〜

なお、私自身はコストコのホットドッグがトッピングし放題かつ安いので大好きです。実家からコストコが違いのでよく行きます。また、山梨も美しい山並みの景観が残る美しい都市だかけなのでこちらも大好きです。






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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】1級建築士、建築基準適合判定資格者、宅建士など 【実績・現在】元役人:建築・都市計画・公共交通行政などを10年以上経験 / 現在は、まちづくり会社を運営:建築法規・都市計画コンサル,事業所の立地検討,住宅設計など