【用途地域制限の歴史・変遷】新都市計画法(1968年)制定以降の用途地域制限の歴史を簡単にまとめてみた。

この記事では、用途地域制限が、旧都市計画法の3地域から現在の13地域へ、なぜ・どのように変わってきたのかをまとめます。

先に結論です。大きな流れは、1919年の3地域、1950年の4地域、1971年の8地域、1993年の12地域、2018年の13地域です。ただし、これは制度の節目。あなたが調べている土地の色が変わった日は、自治体の都市計画決定・変更告示をたどらないと分かりません。

こんにちは。やまけんです。現在の建築可否だけなら建築基準法別表第2を読めば答えに近づけます。でも、古い確認図書に「住居地域」「第二種住居専用地域」と書いてあったり、用途地域変更後の既存建築物を扱ったりすると、今の13種類だけでは説明できません。制度の変遷を知っていると、古い資料を“現在の名称へ無理に読み替える”失敗を避けられます。


用途地域は都市計画で指定し、建築基準法で用途を制限する

都市計画法第8条・第9条は、用途地域という都市計画のメニューと各地域の目的を定めています。自治体が都市計画として区域を指定し、その区域内で建てられる用途を建築基準法第48条・別表第2が規制する、という二段構えです。

ここは実務で大事です。国の改正法が施行された日と、個々の土地について新しい用途地域が都市計画決定された日は同じとは限りません。古い確認済証、不動産資料、増改築履歴を調べるときは、法令の施行日、自治体の都市計画告示日、建築・用途変更をした日を分けて並べます。

大正8年から令和までの用途地域制度の変遷と1971年の8地域・1993年の12地域の正式名称
用途地域の数と正式名称の変遷。西暦と和暦を併記し、一本の縦軸で制度の流れを示しています。対象地の指定履歴は自治体の都市計画告示で別に確認します。

1919年の旧都市計画法は、住居・商業・工業の3地域から始まった

1919年(大正8年)に都市計画法と市街地建築物法が制定され、用途地域制度の出発点となりました。当時の基本は住居地域・商業地域・工業地域の3地域です。現在のように「低層住宅地」「幹線道路沿道」「工業専用地」を細かく塗り分ける制度ではありませんでした。

とはいえ、3色だけで都市を見ていたわけでもありません。美観地区、風致地区、防火地区、特別工業地区などを重ね、都市の衛生、防災、景観、工業立地を調整していました。つまり、用途地域の歴史は「種類が増えた歴史」であると同時に、一つの大まかな色では拾えない市街地の課題を、地域・地区や用途制限で補ってきた歴史でもあります。

戦後の1950年(昭和25年)に建築基準法が制定され、市街地建築物法は廃止されました。用途地域は住居・商業・準工業・工業の4種類で再出発します。準工業地域が独立したことで、住宅や商業と工業が混在する市街地を、工業地域と同じ一色で扱わない考え方が明確になりました。

高度成長期の市街地拡大で、8地域から12地域へ細分化

1968年(昭和43年)の新しい都市計画法は、線引き制度によって市街化区域と市街化調整区域を分け、計画的な市街地形成を進める枠組みを作りました。その流れの中で建築基準法も改正され、1971年(昭和46年)1月1日から8種類の用途地域による規制へ移ります。

  • 第一種住居専用地域
  • 第二種住居専用地域
  • 住居地域
  • 近隣商業地域
  • 商業地域
  • 準工業地域
  • 工業地域
  • 工業専用地域

低層住宅地を守る地域、日用品の買物を支える近隣商業地、住宅との混在を前提としない工業専用地などが区別され、3〜4地域の時代より都市像を細かく描けるようになりました。ただ、住居系はまだ3種類です。中高層住宅、沿道サービス、住環境保護の強弱を一つの「住居地域」だけで整理しにくい問題が残りました。

そこで1992年(平成4年)の都市計画法・建築基準法改正により、用途地域は8種類から12種類へ細分化されます。施行は1993年(平成5年)6月25日です。住居系を低層・中高層、第一種・第二種へ分け、準住居地域を加えたことで、現在の骨格ができました。

  • 第一種低層住居専用地域
  • 第二種低層住居専用地域
  • 第一種中高層住居専用地域
  • 第二種中高層住居専用地域
  • 第一種住居地域
  • 第二種住居地域
  • 準住居地域
  • 近隣商業地域
  • 商業地域
  • 準工業地域
  • 工業地域
  • 工業専用地域

ここで古い資料を読むときの注意があります。たとえば「第二種住居専用地域」という旧名称を、現在の「第二種低層住居専用地域」だと名称だけで決めつけてはいけません。自治体は新制度に合わせて都市計画変更をしているため、場所によって移行先が異なります。正しい履歴は、当時の計画図、新旧対照図、変更理由書、告示番号で確認します。

2000年代以降は、地域数だけでなく立地の質を調整

2002年(平成14年)の改正では、容積率・建蔽率などの選択肢が拡充され、既成市街地の状況に応じて密度を細かく設定しやすくなりました。用途地域は建物用途だけを決める制度に見えますが、実際の都市像は建蔽率、容積率、高さ、日影、地区計画などとの組合せで決まります。

2007年(平成19年)11月30日には、床面積1万㎡を超える劇場、店舗、飲食店などの大規模集客施設について、立地できる用途地域が原則として近隣商業地域、商業地域、準工業地域に限定されました。これは用途地域を13番目へ増やした改正ではなく、人口や交通へ広域的な影響を与える施設を、立地適正の段階で絞る改正です。用途地域の「数」だけを追うと、この重要な節目を見落とします。

2018年(平成30年)4月1日には田園住居地域が加わり、用途地域は現在の13種類になりました。田園住居地域は、農業の利便と低層住宅の良好な環境を両立させる地域です。制度があることと、対象地で実際に指定されていることは別ですので、最新の都市計画図で確認します。詳しい用途制限は田園住居地域で建築できる建築物で解説しています。

対象地の変遷を調べる実務手順

制度史を知る目的は、年表を暗記することではありません。対象地で何が起きたかを、資料で説明できるようにすることです。私は次の順番で整理するのが分かりやすいと思います。

  1. 現在の都市計画情報システムで、用途地域、建蔽率・容積率、地区計画、特別用途地区を確認する
  2. 確認済証、建築計画概要書、旧公図、売買時資料から、建築・増改築・用途変更の時期を拾う
  3. 自治体の都市計画課で、用途地域の当初指定・変更告示、計画図、新旧対照図を確認する
  4. 建築時点の用途規制を、当時の建築基準法第48条・別表第2で確認する
  5. 現在不適合なら、法改正・都市計画変更・建築後の敷地変更のどれで生じたのかを分ける

用途地域の変更で、適法に建てられた建築物が現在の用途制限に適合しなくなっていても、直ちに違反建築物になるわけではありません。既存不適格として扱われる余地があります。ただし、増築・用途変更の可否は、基準時や適用条文、既存部分と変更部分の関係を別に検討します。「昔からこの用途だから大丈夫」では足りません。

また、現在の建築可否は用途地域だけでは決まりません。特別用途地区、地区計画、特定用途制限地域、臨港地区などで制限が追加・緩和される場合があります。建物用途区分一覧と自治体の条例・都市計画図をセットで確認してください。

ということで、用途地域の変遷は「3・4・8・12・13」と覚えるだけでは不十分です。制度の節目を地図の指定履歴へつなぎ、建築時点の規制と現在の規制を切り分ける。ここまでできると、古い建物の調査や用途変更の判断に使える歴史になります。

一次資料:国土交通省「都市計画制度小委員会資料(用途地域制度の変遷)」国土交通省「建築基準法の変遷」国土交通省「田園住居地域」田園住居地域の創設に関する技術的助言関連条文ナビ


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cat_yamaken
YamaKen都市と建築が好きな人
【資格】一級建築士、建築主事、宅建士、省エネ適合性判定員など /【実績・現在】元役人:土木行政・建築行政・都市計画行政・公共交通行政・まちづくりなどを10年以上経験 / 都市づくりコンサル、建築設計、執筆/