【ロ準耐火建築物の構造とは?】防火壁の設置を逃れるために設置?分かりやすく解説

この記事では、準耐火建築物のうち、ロ準耐火建築物(ロ-1、ロ-2)の解説記事です。特に汎用性の高いロー2準耐火建築物を分かりやすく解説しています。

準耐火建築物でもイ準耐火建築物とは異なり準耐火構造ではないロ準耐火建築物について、どういった場合に活用できるのか建築法規の初心者向けに解説しています。

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ロ準耐火建築物の特徴

ロ準耐火建築物の構造が悪いというわけではないのですが、準耐火といいながら、外からの延焼にはある程度強い反面、内部火災に対しては脆い特徴を持っています。

ですので、ロ準耐火って本当に準耐火なのだろうかと疑問に思うことがあります。
とはいえ、工場や倉庫などの大規模空間が必要な建築物では必然的にロ準耐火建築物とせざるを得ないので社会的な必要性は認識しています。

なお、タイトルに”逃れる(のがれる)”とは使いたくはなかったのですが、適切な表現が見当たらなかったので、業界的な用語にしました。

では、まずは法律の内容からみていきましょう。

ロ準耐火建築物の法律上の定義

ロ準耐火建築物は、建築基準法第2条第九の三 ロ号に定義されています。

なぜ、ロ準耐火というと、「建築基準法第2条第9の3」のうち、”ロ”に規定されているからです。ここで法律を読むと気づく方も多いと思いますが、ロ準耐火は準耐火構造ではなく、準耐火性能と同等とされていいます。

構造と建築物は異なることに注意が必要です。

[建築基準法第2条第九の三]
 耐火建築物以外の建築物で、イ又はロのいずれかに該当し、外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に前号ロに規定する防火設備を有するものをいう。
イ 主要構造部を準耐火構造としたもの
ロ イに掲げる建築物以外の建築物であつて、イに掲げるものと同等の準耐火性能を有するものとして主要構造部の防火の措置その他の事項について政令で定める技術的基準に適合するもの

建築基準法第2条第9の3

また、延焼のおそれのある部分外壁の開口部は、防火設備とする必要があります。まずは、なんと言ってもここのが大事な規定です。

防火設備とは一般的には防火シャッターであったり網入りガラスととされるものです。隣接地で火災があった場合に開口部からの炎の侵入を一定時間防ぐ役割があります。

外壁の開口部で延焼のおそれがある部分は防火設備しないと”準耐火建築物”にはなりません。

外壁開口部で延焼の恐れのある部分を防火設備にしない場合、イ準耐火建築物であれば準耐火構造になりますが、ロ準耐火建築物の場合は、ただの『その他建築物』になるだけです。

>>イ準耐火建築物について知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

次に、ロ号の技術的基準についての解説です。この技術的基準によりロー1、ロ−2に区別されます。

ロ-1、ロ-2とは?

では、その技術的基準ですが、建築基準法施行令第109条の3に記載されています。

先程の法第2条9の3号ロに記載されている”政令で定める技術的基準”という部分がこの施行令第109条の3となります。

[建築基準法施行令第109条の3(主要構造部を準耐火構造とした建築物と同等の耐火性能を有する建築物の技術的基準)]

法第2条第9号の3ロの政令で定める技術的基準は、次の各号のいずれかに掲げるものとする。

 外壁が耐火構造であり、かつ、屋根の構造が法第22条第1項に規定する構造であるほか、法第86条の4の場合を除き、屋根の延焼のおそれのある部分の構造が、当該部分に屋内において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後20分間屋外に火炎を出す原因となるき裂その他の損傷を生じないものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものであること。

 主要構造部である柱及びはりが不燃材料で、その他の主要構造部が準不燃材料で造られ、外壁の延焼のおそれのある部分、屋根及び床が次に掲げる構造であること。
 外壁の延焼のおそれのある部分にあつては、防火構造としたもの
 屋根にあつては、法第22条第1項に規定する構造としたもの
 床にあつては、準不燃材料で造るほか、3階以上の階における床又はその直下の天井の構造を、これらに屋内において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後30分間構造耐力上支障のある変形、溶融、き裂その他の損傷を生じず、かつ、当該加熱面以外の面(屋内に面するものに限る。)の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しないものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしたもの

施行令の内容を見ていただくと分かりますが、一号と二号に分かれているのがわります。

この一号が外壁耐火二号が主要構造部不燃となります。

外壁耐火は、耐火レンガ造り(外壁は自立型のCBブロックやRCを想定)りなどを思い浮かべてもらえればイメージしやいすいと思いますが、現代ではあまり見られなくなった構造です。

一方で主要構造部不燃は、鉄骨造であればどのような建築物でも容易に可能です。

建築や不動産関係の業界では、一号がロ一(ろいち)準耐火建築物二号がロ二(ろに)準耐火建築物と呼ばれています。

ロ準耐火建築物の定義

  • 建築基準法施行令第109条の3第一号:ロー1準耐火建築物(外壁耐火)
  • 建築基準法施行令第109条の3第二号:ロー2準耐火建築物(主要構造部不燃)

では、次のようどういった建築物がロ準耐火建築物とするのか説明します。

どういった建築物がロ準耐にする必要があるのか

ここでは、記事冒頭でお伝えしたロ-2準耐火建築物について、汎用性の高さからどのような建築物がこの準耐火建築物とするのか説明します。

はじめに、結論から言うと、法第26条の規定がポイントです。

法第27条の用途や規模等による耐火建築物、準耐火建築物等から生じる場合や法第61条の防火・準防火地域内による規模等の要求も当然にあります。

わたしが建築確認審査を担当していたときは、特殊建築物とならない事務所や工場、倉庫が多かったため、法第26条の防火壁要求が多かった印象です(都内ような大都市の場合には、法第27条や防火・準防火地域の関係から準耐火建築物以上の建築物としていることの方が多いかと思います。)。

法第26条は次のように規定されています。

防火壁とは、耐火構造で自立型としなければならないためとてもコストがかかるし、1,000㎡以内に区画しなければならないため、平面計画上も自由度が失われます。ですので、出来れば避けたい制限です。

(防火壁等)
延べ面積が1,000㎡を超える建築物は、防火上有効な構造の防火壁又は防火床によつて有効に区画し、かつ、各区画の床面積の合計をそれぞれ1,000㎡以内としなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物については、この限りでない。
 耐火建築物又は準耐火建築物
 (略)

建築基準法第26条(抜粋)

がしかしですよ。ただし書きのところをお読みください。ただし書きにより、「準耐火構造建築物」は”この限りでない”とありますよね。

法律では防火壁を造らない代替措置として準耐火建築物以上としなさいとしているのです。そのため、特に空間の大きい建築物を設計する場合には、ロ準耐火建築物とすることが多いのです。

*大空間が必要となる倉庫や工場の場合、防火壁を設置していたら作業上問題になる場合がありますので、これらの用途の場合は、ロ準耐火建築物としている例が多くみられます。

補足記事:防火壁の設置が必要な建築物

では、ここからロ準耐火建築物の構造について解説していきます。

ロ準耐火建築物の構造は?

ロ準耐火建築物の構造をまとめると次のとおりとなります。

あくまでも概要ですので、詳細に設計する場合には、法令・告示に照らし合わせる必要がありますのでご注意くダサい。

ロ-1準耐火建築物

ロ-1準耐火建築物は、外壁を耐火構造、屋根を建築基準法第22条構造や準耐火構造が求められます。*施行令第109条の3第一号に規定。

+外壁開口部の延焼の恐れのある部分は、防火設備(両面2-分)が必要

外壁屋根(延焼部分)屋根(延焼以外)
耐火構造法第22条区域の屋根の構造かつ準耐火構造等
(H12建告第1367号第1二)
法第22条区域の屋根の構造
ロ−1準耐火建築物

ロ-2準耐火建築物

※ロ-2準耐火建築物の構造

ロ−2準耐火建築物は、主要構造部が不燃で屋根が建築基準法第22条構造などが求められます。*施行令第109条の3第二号イ・ロ・ハ

市街化区域であれば一般的に屋根は22条区域構造(不燃材料)ですから、市街化の大抵の鉄骨造建築物はロ−2準耐火建築物にすることが可能です。

+外壁開口部の延焼の恐れのある部分は、防火設備(両面20分)が必要

建築物の部分構造等
不燃材料で造る
不燃材料で造る
外壁(延焼部分)防火構造
外壁(延焼以外)準不燃材料で造る
間仕切り壁(構造及び防火上重要なもの)準不燃材料で造る
3階以上の床(又は直下の天井)準耐火構造等
(等:屋内火災により加熱開始後30分間、構造体力上支障のある変形、溶融、亀裂等が生じず、かつ加熱面以外の面の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しない構造*H12建告第1368号)
準不燃材料で造る
屋根法第22条区域の構造(不燃材料)
階段準不燃材料で造る
ロ−2準耐火建築物

*補足
ロ2準耐火建築物は、鉄骨造が多いかと思います。
その場合、折半屋根と梁との間にあるタイトフレーム(面戸部分)ですが、外壁として取り扱われ、準不燃材料や防火構造とするか、開口部として防火設備(特定防火設備*)が要求されますので、建築確認申請の際には、タイトフレームの面戸部分について記載するようにすると指摘を少なく出来ます。

>>関連記事を貼っておきます。

補足記事

参考:竪穴区画は必要?

竪穴区画は、令第112条第11項に記載されています。

法文を読むと、竪穴区画を設けなければならないのは次の建築物です。

地階or3階以上の階に居室を有するもので次のいずれかに該当する建築物です。
・主要を準耐火構造(耐火構造)とした建築物
・施行令第136条の2第一号ロor第二号ロ

主要構造部を準耐火構造とした建築物又は第136条の2第一号ロ若しくは第二号ロに掲げる基準に適合する建築物であつて、地階又は3階以上の階に居室を有するもののたて穴部分(長屋又は共同住宅の住戸でその階数が二以上であるもの、吹抜きとなつている部分、階段の部分(当該部分からのみ人が出入りすることのできる便所、公衆電話所その他これらに類するものを含む。)、昇降機の昇降路の部分、ダクトスペースの部分その他これらに類する部分をいう。以下この条において同じ。)については、当該たて穴部分以外の部分(直接外気に開放されている廊下、バルコニーその他これらに類する部分を除く。次項及び第十三項において同じ。)と準耐火構造の床若しくは壁又は法第二条第九号の二ロに規定する防火設備で区画しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当するたて穴部分については、この限りでない。

*令第136条の2第一号ロ・二号ロ建築物は、いわゆる特定避難時間倒壊防止等建築物のことです。

建築基準法施行令第112条第11項

つまり、主要構造部が準耐火構造または耐火建築物でなければ竪穴区画を行う必要はないのです。以前、京アニ事件で多くの方が犠牲になりましたが、その際の建築物は事務所で3階建ての建築物でした(ロ-2準耐火建築物)。

イ準耐火建築物は主要構造部が準耐火構造のため竪穴区画を行う必要がありますが、ロ準耐火建築物は、主要構造部が準耐火構造(耐火構造)ではありませんので、竪穴区画は不要となります。

本記事のまとめ

ロ準耐火建築物には、2種類(ロ一、ロ二)あり、それぞれ防火特性が異なります。とはいえ、ロ-1は消えゆく存在なので、あまり見ることはないです・・・

ロ−1は外壁耐火、ロー2は主要構造部不燃と覚えてみてください。

特に市場的に汎用性の高いロ-ニは準耐火建築物とはいえ、防火特性として脆弱(特に内側火災には弱い)な部分もあります。

ですので、建築基準法上で規定されるから最低限の構造としておこうとするのではなく、建築主にそれぞれの防火特性を説明してみて、防火上の構造を選択するようにしてもらった方が良いです。

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今回の記事は以上となります。参考となれば幸いです。






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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】1級建築士、建築基準適合判定資格者、宅建士など 【実績・現在】元役人:建築・都市計画・公共交通行政などを10年以上経験 / 現在は、まちづくり会社を運営:建築法規・都市計画コンサル,事業所の立地検討,住宅設計など