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【立地適正計画とは?】役割や特徴、必要性など全体像を簡単に解説

この記事では、2014年に誕生したコンパクシティの形成を推進する「立地適正化計画」の基礎を簡単に解説!!

私生活やビジネスに関わるまちづくりの計画となっているので知っていれば得する計画です。
(*)これまでに記事にした立地適正化計画に関する記事のまとめと最近の動向などを踏まえて解説します。

簡単かつ簡潔の予定だったのですが、ついつい熱くなってしまいボリュームが大きくなってますので、長文が苦手な方はポイントごとにご覧ください。

【補足】
これまでの立地適正化計画に関する私の記事については、サイト右上の検索窓にて「立地適正化計画」と入力して検索窓の部分をクリックすることで過去記事をチェック可能です。
または、カテゴリーのコンパクトシティをクリックしても読めます。

解説の前に簡単な自己紹介です!

YamakenBlogは、建築基準法や都市計画法、宅建業法など、まちづくりに関連する難解な法律を、元行政職員の私がシンプルでわかりやすく解説しています。
*YamaKenの由来は「山登り好き建築士」ですが、コロナになってからほぼ山登りに行ってないので、タダの建築士になりつつあります。

このブログは、建築・不動産業界のプロから、家づくりを計画中の方、店舗や事務所を立地を検討している方まで、誰でも役立つ情報が満載です!

ぜひ、ブックマークしてください!これからも役立つ情報を続々と発信していきます。 
*このサイトリンクは、ブログやメール、社内掲示板などで自由に使っていただいてOKです!お気軽にどうぞ!




立地適正化計画と呼ばれる理由

立地適正化計画の位置付けが大切!

※立地適正化計画の位置付け

立地適正化計画の正式名称は、『住宅及び都市機能増進施設の立地の適正化を図るための計画』といいます。

誕生は平成26年8月です。

平成26年は震災から3年後の2014年ですから比較的新しい制度です。

この制度が誕生するまでは、具体的にコンパクトシティの形成を推進する制度は存在しなかったため、国全体として大きな方向転換が起きた記念すべき年でもあります。

都市機能増進施設?

まず「都市機能増進施設」という用語から。

都市機能増進施設とは、日常生活の必要不可欠な施設(=エッセンシャル施設)のことをいい、法律では、”医療施設、福祉施設、商業施設その他の都市の居住者の共同の福祉又は利便のため必要な施設であって、都市機能の増進に著しく寄与するもの”とされています。

エッセンシャル思考やエッセンシャルワーカーなどという用語がありますけど、人の生活上なくてはならない施設という定義です。

例えば、病院や診療所、日用品を扱うスーパー、保育所、学校、文化施設などをいいきます。
*文化施設は教育的な視点で必要という意味っぽい。

なお、自治体では上記の法定施設以外に独自に施設を定めています。例えば、業務施設(オフィス)やコンベンション施設などです。

法外の施設を設定することで、独自性を出して自市において不足している機能を戦略的に誘導している傾向があります。

>>>法定誘導施設の解説はこちら

立地の適正化?

次に、「立地の適正化」という部分!

なぜ、この理由は、❶戦後から現代までに地方都市を中心に市街地の面積が拡大したことと、そして、❷想定どおりに人口が増加しなかったこと です。

地方では郊外に住宅団地が造成され市街地が拡大したものの、想定した人口まで到達しなかったことで市街地面積に対する人口の割合(市街化区域内の人口密度人口集中地区内の人口密度など)が低下してます。

人口密度が低下すると一人あたりの財政負担が増加したり日常生活に必要不可欠な施設の維持が難しくなったりします。このことが立地適正化計画が必要な理由にもつながっています。

人口密度と行政コストの関係はこちらの記事から読めます!

人口密度に関する参考記事



こちらのデータは、人口集中地区内の人口密度と面積の推移(2010年3月→2022年3月)です。全国的に見ると人口密度は低下していますが、面積は増加しています。

下図では東京都と北関東のみ人口密度が上昇しています。
東北地方では、面積が増加、人口密度も低下した上で人口自体も低下している最悪の状態に突入しています。

※出典:都市計画現況調査

次に市街化区域内の人口密度の推移(2010年3月→2022年3月)です。

全国・東京都では市街地の人口密度は増加していますが、東北地方、北関東、北陸では低下していることが分かります。

※出典:都市計画現況調査

こちらは、東北地方の山形市の人口集中地区の密度と面積の推移(1980→2020)です。

山形市は東北地方の中でもコンパクトな市街地が形成されている方ですが、それでも40年間で千代田区一個分の面積が増加し、密度も60人/haから50人/haまで低下しています。

※出典:国勢調査

地方の市街地では、都市機能の維持・存続に必要な不可欠な人口密度を維持できずに撤退等を招き市街地の居住者の生活の利便性が低下したり、徒歩圏域(半径800m)や自転車圏域での生活が著しく困難となっています。

今後も人口密度が低下していく中でも、最低限の利便性を確保した市街地を確保しようとするために住宅と都市機能の立地場所を論理的思考に基づく適正配置にしようとするのがこの計画となります。

ですので、「立地の適正化」という名称がつけられています。

自治体ではまちづくりの新たな戦略として美しい未来をイメージさせる光輝く計画とする見せ方をしているので勘違いされやすいですが、立地適正化計画の真実は『放置すれば瀕死に向かう地方都市を救うための治療薬』です。

従来の都市計画マスタープランのように、明るく人がイキイキと生活できる都市をつくるというアプローチではなく、数字を使ってアプローチしています。

また、広く薄い内容ではなく、数多くある課題の中から解決する課題を抽出・選択した上でつくる計画です。

ですので、従来のまちづくり計画に比べて財政投資を抑えるエリアが発生するため、一部の郊外の既得権者や共産系の方々に反対される傾向にあります。また、論理的思考が苦手な方にとっては理解できない計画となっていることも反対される理由の一つになっています。

補足:計画への反対・批判

立地適正化計画は都市課題の解決に対して正確にアプローチしています。

現代の地方都市の人口密度低下と少子高齢化による財政の圧迫という課題を解決する方法としては、市街地の規模を縮小させるのは正解の選択肢です。

でもなぜ?って思いません?

平成初期には人口減少が進むことは分かっていたのです。これは国・地方行政ともにわかっていたことです。ですが、何も対策しなかった(できなかった。)

それは一部の既得権者や民間事業者に配慮してきたからです。

ところが予想以上に急速な人口減少局面を迎えることが分かり、本格的に地方財政がヤバいとなったので、2014年の法改正によってコンパクトシティに明確に舵きりしたわけです。

コンパクトシティへの批判

自治体のコンパクトシティといえば、青森や津山の市街地再開発の例のように失敗やん!と叫ぶ人いますよね。

なのになぜ治療薬?なのか。
某墓標と叫ぶ団体の教祖や信者がこの記事を読んでいたら怒られそうですが、、、

当時(平成中期)の市街地再開発は中心市街地活性化法という経済産業省が推し進めた中心市街地活性化策の一つで駅周辺の活性化が狙いです。

コンパクトシティの形成に対する効果としては、一部の都市機能・人口誘導という側面で一定の効果があるとされていたことで、事業を市民に分かりやすく伝えようとコンパクトシティという名称が使われたのです。結果、批判しやすい言葉としてコンパクトシティという名前が使われた。

今や忘れさられているまちづくり三法の一つでしたが、調整区域内での大規模開発団地の規制強化などの郊外の開発抑制に対して一定の効果はあったです。

ですが、人口密度低下を招く市街化区域内の縁辺部(都市農地や工業地域など)の開発抑制効果は無かったので、世帯数の上昇傾向とともに郊外開発が進み人口密度の低下を招く状況は変わらずだったのです。

話を戻しまして、市街地再開発事業では当たり前ですがテナントリーシングはテナント先付ではないため想定される箱物をつくって、それに見合うテナントを呼び込もうとするため、密度低下が進み経済が低下している地方の駅前では、身の丈に担わない計画となり事業が赤字になる可能性は想定できます。

逆をやれば身の丈開発ということで失敗する可能性は低いですよね。

とんでもない求心力・集客力のあるような施設でもない限りは身の丈に合わせないと成立しづらいと思います。

当時は個人商店にちょっと毛が生えただけでも寄せ集めて”大きな箱を用意すれば市街地が活性化して人口が増える”と思っていた時代でもあります。

それに市街地再開発事業や交通結節点である駅周辺整備による建設は簡単にGDPを上げやすいので、経済が低下しつつある地方の短期的な経済活性化としては得策だったといえます。

失敗したとはいえ、市街地再開発にあわせて駅周辺のインフラ整備により街区が整ったり景観・治安上改善したこともメリットはあったといえますし、コンパクトシティの形成はスタートしたばかりです。

数十年以上の期間にわたって進めるものなので現時点でコンパクトシティという言葉のみをとって批判すること自体に何の意味もないのが実情です。

法定根拠

立地適正化計画は、平成14年(2002年)に制定された「都市再生特別措置法」の第81条に規定されています。

都市再生特別措置法は、簡単に言うと少子高齢化社会などの社会情勢の変化に柔軟に対応していくためにつくられた法律です。現代の社会情勢の変化に対応する臨時法です。

(立地適正化計画)
第81条 市町村は、単独で又は共同して、都市計画法第4条第2項に規定する都市計画区域内の区域について、都市再生基本方針に基づき、住宅及び都市機能増進施設(医療施設、福祉施設、商業施設その他の都市の居住者の共同の福祉又は利便のため必要な施設であって、都市機能の増進に著しく寄与するものをいう。以下同じ。)の立地の適正化を図るための計画(以下「立地適正化計画」という。)を作成することができる。

都市再生特別措置法第81条(抜粋)

策定義務の有無

都市再生特別措置法第81条に”作成することができる”と書かれているように、『策定義務はない』です。

ところが、こちらの資料にあるように504都市で公表されています。

これは、全国の都市計画区域を有する1352市町村の約37%にあたります。人口減少が進む地方でみれば大半の市町で策定されていることになります。

※出典:国土交通省
※出典:国土交通省

補足:法定義務ではないのに策定が進められている理由

理由の一つとして、国の補助金・交付金の活用において立地適正化計画の策定が必須とされていることが挙げられます。特に国交省系の補助金は立地適正化計画と連動しています。

また、策定が必須とされていなくても補助率の嵩上げなどの措置が設けられているため財政難に苦しむ地方では策定しているかたちです。策定自体は数百万〜数千円万円でつくることができるため、この計画の策定によって補助額が数億単位で増額されるのであれば策定するのは必然だったりします。

なお、補助金の活用予定がなくても人口減少や市街地の拡大、低密度化などにより将来的に財政難となることが予測されている場合には、その対応策として立地適正化計画を策定している自治体もあります(最も真っ当な自治体です)。

関連記事(もっと詳しく知る)

立地適正化計画の役割

立地適正化計画の最もウェイトを占めている役割は「誘導」です。

これは、都市計画マスタープランと異なる特徴です。都市計画マスタープランとの違いは次の記事にまとめています。

さらに詳しく

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誘導策としては、誘導区域での誘導施設と住宅の建築行為を誘導することにあります。市街地再開発や街中での区画整理、小規模開発などと連動して都市に必要な機能を維持したり誘導します。

誘導策

・都市機能誘導区域への誘導施設の誘導(国+自治体による税財政支援)
・居住誘導区域への住宅の誘導(国+自治体による税財政支援)
・誘導区域外での一定規模以上の開発及び建築行為の届出制度

法律上は郊外の一定の開発規制も可能な制度ではあるものの現実的ではないので誘導メインにならざるを得ない状況です。

郊外の都市農地の開発規制を行うと都市計画税を払ってきた地権者からすれば「見捨てるのか!」、「利権が無くなる」となり地権者反対運動が起こるので政治的な決断として首長が公約に掲げないと無理です。

100%無理。公約に掲げて当選できるのはDID地区内の人口が多い三大都市圏のみ。公約を掲げても短期的にはメリットがないため票を取れないので誰もやりたがらないのは実態です。

話を戻しまして、立適は誘導がメイン事業です。

行政計画で誘導する区域を示すことと支援策で誘導を図ることが特徴的です。

ちなみに、郊外規制という面では居住調整地域(一定規模の住宅開発抑制)の設定なども行うことができますが、現時点では非線引き都市のむつ市のみとなっています。線引き都市であれば居住調整地域ではなく逆線引きで調整区域にした方が効果的です。

用語解説

立地適正化計画に対する誤解

墓標と揶揄する集団の的とされている再開発事業が実施された平成中期のコンパクトシティとは市の中心部を拠点として都市機能や人口を一箇所に集めようとするものでした。

ところが市町村合併や郊外での住宅団地造成などによって都市構造が大きく変化していることに対して無理やり感があったわけです。

もっと現実的な現代の都市構造を踏まえようとゆうことで「多極ネットワーク型コンパクトシティ」という既存の複数ある拠点を活かそうとする考えにシフトしています。

※出典:国土交通省

加えて、コンパクトシティというと中山間地域の方々や市街化調整区域の人達を街中に誘導しようとする政策として捉えていますが、市街地のフリンジ(縁辺部)が課題となっていることに対する課題解決型の計画のため、調整区域内の農林業者や都市計画区域外は直接的には関係がない話です。
*山間部は内閣府が地域コミュニティの維持という観点で小さな拠点形成を支援しています。

とはいえ、個人的には市街化調整区域で線引き前に駆け込みで建築した非農林漁業の方に対しては市街地への移住が適切ですし、都市計画区域外を含めて農林業地は農林業の従事者とその生活を支えるためのサービス施設維持、森林保全などに手厚い支援を行うことが都市全体の防災、治安、経済の最適化につながると考えています。

バランスをとりながら山林・農地保全と拡大、住居系市街地のコンパクト化が最適解だと考えています。

立地適正化計画が抱える課題

立地適正化計画の課題

郊外の開発規制の実効性が乏しい

郊外の開発規制が弱いです。まちづくり三法の改正時よりは実効性がありますが、それでも郊外の開発抑制効果は低いです。

中国なら強制的に建物やインフラを破壊してそうですけどね・・・

立地適正化計画では都市計画区域内に「居住誘導区域」と「都市機能誘導区域」を設定しますが、この誘導区域外かつ都市計画区域内(市街化区域を指定している都市は市街化区域)の開発を規制する方法は、「居住調整地域」という都市計画(現在は、青森県むつ市のみ指定)を指定することが制度上可能です。
*居住調整を指定しない場合は届出のみ。

一つ戸建て住宅の開発を抑制するのではなく、3戸以上のアパートや住宅地開発を抑制(開発許可)するのみに留まっています。

非線引き都市のように市街化調整区域を指定していない都市では実効性がありますが、線引きしている都市では居住調整を指定するならば市街化調整区域に逆線引きした方が実効性が高いです。また、現行法では逆線しても既存不適格として残り続けることが可能です。

いずれの方法も新たな宅地開発が困難となるため、土地の地価が下落するのは必至です。人口減少と世帯数減少によって地価下落は分かっているものの、それでも土地に制約が課されるとなると、将来的な収益が減少するため既得権を手放したくはない人達に理解してもらうのは難しいです。

これを実現するには、都市圏を構成する市町村長が連携して公約に郊外規制を掲げて当選するしかないかなと思います。難しいとはいえ、放置すれば市街地は拡大を続ける一方で、人にも地球にも良い影響はないことは確か。

まとめ

  • 正式名称:住宅及び都市機能増進施設の立地の適正化を図るための計画
  • 都市機能増進施設:医療や福祉、商業等の日常生活に必要不可欠な施設のこと
  • 法的根拠:都市再生特別措置法第81条
  • 策定義務の有無:無
  • 計画の役割:誘導による多極ネットワーク型コンパクトシティの形成
    (計画の一部は都市計画マスタープランとみなす)
  • 計画期間:中長期

>>>立地適正化計画に関する記事一覧






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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】1級建築士、建築基準適合判定資格者、宅建士など 【実績・現在】元役人:建築・都市計画・公共交通行政などを10年以上経験 / 現在は、まちづくり会社を運営:建築法規・都市計画コンサル,事業所の立地検討,住宅設計など